11 月号ピックアップ記事 /エッセイ
『法華経』に学ぶ人生の知恵 植木雅俊(仏教思想研究家)
「諸経の王」と呼ばれ、古来多くの人が感化を受けてきたという『法華経』。専門の物理学から転じた異色の仏教思想研究家・植木雅俊氏もその一人である。かつて失意の底にあった氏が、『法華経』から掴み取ったもの、そしていまを生きる私たちが学ぶべきものは何か──。
【写真=仏教研究の第一人者・中村元氏(左)と植木氏】
対立を乗り越え、お釈迦様が説かれた本来の仏教に還れと訴えたのが『法華経』です。
そしてその核心となるのが、人間がいかに尊い存在であるかという主張なのです
植木雅俊
仏教思想研究家
ここに書かれているのは、まさに私のことではないか!
震えるような感動を与えてくれた『法華経』と私が出逢ったのは、大学時代のことでした。
長崎県の島原市に生まれ育った私は、少年時代は地元の優等生として一目置かれる存在でした。しかし、大学進学で郷里を離れて人間関係がリセットされ、自分をチヤホヤしてくれる人たちが周りにいなくなると、私は勉学への意欲を失ってしまいました。それまでの自分が、ただ虚栄心を満たすために勉強をしていたことを痛感し、深い自己嫌悪に苛まれました。
それに追い打ちをかけたのが、学生運動家たちでした。学生運動が盛んだった当時、彼らは授業中にも教室に押しかけ、私たちに議論を吹っかけてきました。苦し紛れに返答すると「だから何だ?」「おまえは何も考えていないだろう!」と詰め寄られ、深く傷つき、自己嫌悪、自信喪失が高じて、私は鬱病になってしまいました。
そんな私に光明をもたらしてくれたのが、仏教研究の第一人者である中村元先生の著書でした。
……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
◇自らをたよりとして他人をたよりとせず
◇無縁と思っていた財宝が自分のものだった
◇日々の活動そのものが『法華経』の実践
◇偉大な人格に触れることの大切さ
◇罵られ、誤解されても誠意を貫きとおす
◇慈悲の心に満ちたお釈迦様の行いに倣って
プロフィール
植木雅俊
うえき・まさとし――昭和26年長崎県生まれ。九州大学大学院理学研究科修士課程修了、東洋大学大学院文学研究科博士後期課程中退。平成3年より東方学院にて中村元氏のもとでインド思想・仏教思想論、サンスクリット語を学ぶ。14年お茶の水女子大学で人文科学博士号取得。20年『梵漢和対照・現代語訳 法華経』上下(岩波書店)で第62回毎日出版文化賞受賞。著書に『法華経とは何か その思想と背景』(中公新書)、訳書に『サンスクリット版縮訳 法華経現代語訳』(角川ソフィア文庫)など多数。
編集後記
8年がかりで『法華経』の全文訳を手掛け、毎日出版文化賞を受賞した仏教思想研究家の植木雅俊さん。自己嫌悪や自信喪失が高じて鬱病を患った学生時代に出逢い、救ってくれたのが『法華経』だったといいます。その実体験を交えながら説く仏典の教えに興味は尽きません。
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