11 月号ピックアップ記事 /インタビュー
人のために尽くす——それが私の選ばれた道 ~国際霊柩送還の現場から~ 木村利惠(エアハース・インターナショナル社長)
海外で亡くなった日本人の遺体を国内に搬送し、遺族の元に送り届けるプロフェッショナル集団がいる。国際霊柩送還士。国境を越え、亡くなった方の尊厳と遺族の思いに寄り添い続けている。同事業の専門会社を日本で初めて立ち上げた木村利惠さんに、道なき道を切り拓いてきた歩み、人の生死をみつめる中で掴んだ〝幸せな人生を送るヒント〟を伺った。
人生において己の利益しか考えられないような人は、表情を見れば分かる。その人が歩いた生き方は顔に出るんですよ。
人によって態度を変えず、自分の利益を度外視して、人のために尽くしていく。
正直に自分の信念を貫き、お天道様に恥じない人生を全うすることが、何より大切なのではないでしょうか
木村利惠
エアハース・インターナショナル社長
――昨年、木村さんがモデルとなった連続ドラマ『エンジェルフライト』が世界同時配信され、大きな話題を集めましたね。
〈木村〉
私は関係各者に「ママ」「姉さん」って呼ばれているんですけど、ドラマを見た人から「ママそっくりだね」という声がたくさんありました。主演を務めた米倉涼子さんは「利惠さんが命を懸けている国際霊柩送還の仕事を100%以上振り絞ってやりたい」と、所作や話し方まで私に似せて演じてくれた。彼女の俳優魂が本作を輝かせたのではないでしょうか。
――1話1話、現場の緊張感が伝わる内容に感動いたしました。
〈木村〉
実は、現場を忠実に再現したいという監督の意向に沿い、撮影中は裏監督のように監督の隣に張りついていました(笑)。ご遺体を処置する筆捌き一つとっても、それじゃだめ、この手はもっと丁寧にすべきだと指導する。私たちの仕事がリアルに伝わるよう、全面的に監修に携わりました。
その甲斐あってか、過去に担当したご遺族から「うちのおじいちゃんが綺麗に戻ってきた理由が分かった」とか、いままさに海外でご家族を亡くされた方には「あのドラマのモデルになった会社なら安心だね」といった有り難い反響をいただけましたね。
――国際霊柩送還という言葉は貴社の登録商標だと伺っています。
〈木村〉
そうなんです。2003年に当社を設立した際に自ら考案したものなので、聞き覚えのない方も多いかもしれません。
国際霊柩送還とは、海外で亡くなった日本人のご遺体やご遺骨を日本に搬送、また日本で亡くなった外国人のご遺体やご遺骨を祖国に送り届ける仕事です。外務省が2020年度に行った調査では、海外で亡くなる日本人は年間400〜600人に上り、その約半数の送還を当社が請け負ってきました。
海外でご家族が亡くなった場合、……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇誠意を尽くして寄り添うことが本当のグリーフワーク
◇ご遺体の処置ではなく帰国のお手伝い
◇誰もやりたがらない仕事に価値を見出す
◇日本初となる国際霊柩送還業の専門会社を立ち上げて
◇しっかり悲しむことは死を受け入れること
◇国際霊柩送還の現場で掴んだ「人生で一番大事なもの」
本記事では全5ページにわたって、日本における国際霊柩送還業のパイオニアである木村さんの体験談をお話しいただきました。
木村さんは処置を施す間、絶えず遺体に話しかけている。心を込めて向き合うことで、魂が戻ってくるという
プロフィール
木村利惠
きむら・りえ――1961年東京都生まれ。勤務先の葬儀社で国際霊柩送還業を学ぶ。2003年日本初の国際霊柩送還専門会社となるアムズコーポレーション(現:エアハース・インターナショナル)を設立。2012年エアハース・インターナショナルを題材とした佐々涼子氏のノンフィクション『エンジェルフライト:国際霊柩送還士』(集英社)が出版され、開高健ノンフィクション賞を受賞。年間平均250体ほどの遺体・遺骨の送還に携わっている。
編集後記
「私は嘘つきや体裁、上辺だけの付き合いが大っ嫌いなんです」。この言葉通り、ご自身の体験談、活動に懸ける思いを赤裸々に語ってくださった木村さん。バイタリティーに満ち溢れており、多くの人を惹きつける所以を肌で実感しました。
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