11 月号ピックアップ記事 /インタビュー
よい酒を造れば人は必ず支持してくれる 水野直人(黒龍酒造社長)
北陸の一級河川・九頭竜川の流域で220年の歴史を刻んできた黒龍酒造。かつては主に品評会のために造られていた大吟醸酒を、全国に先駆けて商品化した同社の日本酒は、左党を唸らせる高級酒として高い支持を集めている。革新の連続で今日を築いてきた社長の水野直人氏に、命をみつめて取り組む酒造りについてお話しいただいた。
会社で一番大切なことは、創始の心だと思うんです。
なぜこの会社をつくったのか。百年企業というのは、その創業の思い、DNAをちゃんと引き継いでいるからこそ続けていられるのではないでしょうか
水野直人
黒龍酒造社長
――大吟醸の「黒龍」や純米酒の「九頭龍」などで知られる御社のお酒は、日本酒を代表する高級銘柄として国内外で高く評価されていらっしゃいますね。
〈水野〉
おかげさまで今年創業220年の節目を迎え、僕で八代目なんです。
うちは初代が遺した「よい酒を造れ」という言葉を信念としてずっと大切にしてきました。戦後のお米が足りない時期には粗悪な三増酒が出回りましたけど、そうした中でも自分たちが信じるいいお酒を造り続けました。また、地元のお客様に飲んでいただくことに苦労して、新たに都会に販路を求めていったことも、いまに繋がっているのではないかと思います。
――よい酒を造れば支持されるという信念を貫いてこられた。
〈水野〉
しかし、清酒の消費量は1973年をピークに減少し続けていて、ただよい酒を造るだけではもうダメな時代になってしまいましたからね。よい酒を造るのは当たり前。そこにプラスαで時代に合ったよい酒というのを追求していかなければいけない、と考えて企業努力を重ねてきました。
例えば、祖父は戦後のお米もなかなか手に入らない時代から高級な吟醸造りに取り組んでいましたし、父の時代には、冷酒を飲むという新しい文化の普及や、パッケージデザインなどのブランド戦略などを通じて祖父の取り組みを昇華させました。
どこの蔵元さんもやっていなかったことで、そういう革新的なことに挑戦するDNAが僕らの中に流れているのかなとは思いますね。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇時代に合ったよい酒を追求し続けて
◇会社組織での酒造りとブランディングの大切さ
◇顧客の元に届くまでのすべてが大切
◇価値観を共有できる店と一緒にやっていく
◇一歩先ではなく半歩先を行く
◇日本酒はもっと評価されていい
◇ゼロ杯を一杯に
◇日本酒が教えてくれること
プロフィール
水野直人
みずの・なおと――昭和39年福井県生まれ。東京農業大学醸造学科卒業後、協和発酵工業(現・協和キリン)入社。平成2年黒龍酒造入社。17年同社社長に就任。
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