10 月号ピックアップ記事 /インタビュー
諦めなければ道は開ける 浅川智恵子(日本科学未来館館長/IBMフェロー)
日本科学未来館館長の浅川智恵子氏は、IBMフェローとしてアクセシビリティの研究もリードしている。14歳で失明。IBM入社後は、ウェブ上の文字情報を音声で読み上げる「ホームページリーダー」など時代の流れを大きく変えるソフトを開発してきた。「諦めなければ道は開ける」を信条としていまも前進を続ける浅川氏に、失明という試練や師との出逢いによって切り拓いた人生を振り返っていただいた。
人生の中では幸運に思えること、不運に思えること、いろいろな出逢い、出来事がありますが、それを受け入れて進むことによって、より強かったり、より面白かったりする人生が開けるんだなということを、最近しみじみと感じているのです。
浅川智恵子
日本科学未来館館長/IBMフェロー
──浅川さんが失明されたのは中学生の時だとお聞きしています。
〈浅川〉
ええ。私は子供の頃、スポーツ少女でした。将来はオリンピックに出たいと思うほどスポーツが大好きだったのですが、11歳の時、プールの壁に顔をぶつけてしまい、目の下に怪我を負いました。それから徐々に視力が落ち、14歳で完全に失明してしまったのです。それでも家に引きこもることはなく、学校には通い続けていました。
──大変辛い状態でも、前向きな気持ちを維持されたのですね。
〈浅川〉
前向きというほどではないですが、ただ、家にいても仕方がないというのか、そこは多分に体育会系の性格もあったかもしれませんね。もちろん、まだ点字を習っていませんから、教科書は自分で読めない、辞書も引けない、学校に一人で行けない。受験勉強をしようにもテキストはないという苦しい日々でした。とにかく社会と繋がっていたい、学校と繋がっていたい、友達と繋がっていたいという思いで毎日を過ごしていたように思います。
プロフィール
浅川智恵子
あさかわ・ちえこ――大阪府出身。11歳の時の事故が原因で14歳で失明。昭和60年日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所に入社。平成15年米国女性技術者団体殿堂入り。16年東京大学工学系研究科先端学際工学専攻博士課程を修了、博士(工学)取得。21年IBMフェロー就任。25年紫綬褒章受章、米カーネギーメロン大学IBM特別功労教授を兼務。令和元年全米発明家殿堂入り。3年4月、日本科学未来館館長に就任。
編集後記
失明というハンディを克服、「ホームページリーダー」をはじめ視覚障碍者の自立を促し、社会の流れを変えるソフトを開発した浅川智恵子さん。現在は日本科学未来館館長、IBMフェローとして活躍中です。「一度選んだ道は最後までやり遂げる」、その生き方に勇気を与えられます。
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