善きことを思い 善きことを行う 大田嘉仁(日本航空元会長補佐専務執行役員) 北 康利(作家)

世のため人のため、善きことを思い、善きことを行う。この信念のもとに京セラを世界的優良企業に育て上げ、第二電電(現·KDDI)の創業に挑戦し、日本航空を不死鳥の如く難らせた稲盛和夫氏。この稀有なる人物を育み、規格外の成功へと導いたものは何か。
稲盛氏の傍に長年仕えてきた大田嘉仁氏と、評伝の執筆を通じて稲盛氏の実像に迫ってきた北 康利氏に、語り合っていただいた。

稲盛さんは、多くの人に希望、生きる力を与えることができるリーダーだと思います

大田嘉仁
日本航空元会長補佐専務執行役員

 それは先天的なものではなく、希望を与えられる自分になろうと努力を重ねたことで養われたものだと私は思うのです。どんなに厳しい環境にあろうと、人を引っ張っていくためには夢や希望を与えなくてはならない。だから自分が辛くても明るく振る舞おう、相手の善いところを見つけてそれを伝えていこうと。
 稲盛さんは第二電電創業の決断に至るまで、「動機善なりや、私心なかりしか」と半年間毎晩自問自答し続けました。
 自分は本当にどんな困難があってもこれをやり抜こうとしているのか、名利を求める気持ちで乗り出そうとしているのではないか。6か月という途方もない期間、自分を疑って、疑って、疑った上で、それでも動機は善で私心はないと確信して乗り出した。だからこそ成功したんだと思うんです。

稲盛さんは、人生を熱く生きること、一所懸命働くことの尊さを改めて教えてくれます。
稲盛さんをいまこそ見直すべきですし、稲盛さんの魅力が増していると思うんです。

北 康利
作家

 稲盛さんは、日本の経営者に、「闘志なき経営はダメです。自分の会社を何としても立派にしてみせると、闘魂を燃やしてほしい」というメッセージを発信されました。
 これは次代を担う経営者ばかりでなく、このコロナ禍を生きるすべての人々に対するメッセージとも言えるのではないでしょうか。

プロフィール

大田嘉仁

おおた・よしひと——昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年日本航空会長補佐専務執行役員に就任(25年退任)。27年京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任。現職は、㈱MTG取締役会長、学校法人立命館評議員、鴻池運輸㈱取締役、㈱新日本科学顧問、日本産業推進機構特別顧問など。著書に『JALの奇跡』(致知出版社)がある。

北 康利

きた・やすとし——昭和35年愛知県生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券業務企画部長等を歴任。平成20年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。『白洲次郎 占領を背負った男』(講談社)で第14回山本七平賞受賞。著書に『日本を創った男たち』(致知出版社)『思い邪なし 京セラ創業者稲盛和夫』(毎日新聞出版)など多数。近著に『乃公出でずんば 渋沢栄一伝』(KADOKAWA)がある。


編集後記

稲盛さんが絶大な信頼を寄せ、京セラからJALの再建現場へ伴う僅かなスタッフの一人として選んだのが、日本航空元会長補佐専務執行役員の大田嘉仁さんでした。評伝を通じて知られざる横顔にスポットを当ててきた作家の北康利さんと共に、稲盛和夫という人物の大成の要因と、人間としての原点について語っていただきました。

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