四書五経に学ぶ人間学 大学
儒教の経書の一つ。修己治人の書として南宋以降、『中庸』『論語』『孟子』と合わせて四書とされた。元々は『礼記』の一篇であり、孔子の弟子である曾子によってつくられたといわれている。
物に本末(ほんまつ)有り。事に終始有り。先後(せんご)する所を知れば、則(すなわ)ち道に近し
(物事には必ず本と末、終わりと始めがある。そこで常に何を先にして、何を後にすべきかを知って行動すれば、その成果もおのずから期して待つべきものがある)
苟(まこと)に日に新た、日々に新たに、又(また)日に新たなり
(どんな立場の人であろうと、毎日の生活や仕事というのは同じことの繰り返しが多い。うかうかやっていると、すぐにマンネリになってしまう。そうならないためには、常に意欲を奮い起こし、「日々に新たに」の決意で取り組む必要がある)
君子は必ずその独りを慎むなり
(君子は人目のないところでも、必ず自分の心を正し、行いを慎む)
小人(しょうじん)間居(かんきょ)して不善を為し、至らざる所無し
(小人は暇を持て余していると、よからぬことを企み、やることに歯止めがかからない)
富は屋(おく)を潤し、徳は身を潤す。心広く体胖(ゆたか)なり
(お金があれば快適な家に住むことができる。それと同様に徳を身につけることができれば、体中を潤して、心は広々とし、体ものびやかになる)
徳は本なり。財は末なり。本を外にして末を内にすれば、民を争わしめて奪うことを施す
(徳こそが政治の根本であって、財は第二義的なものにすぎない。上に立つ者が財を優先させると、下もそれを見習って利益追求に走り、争いや奪い合いを引き起こす)
心焉(ここ)に在らざれば、視(み)て見えず、聴きて聞えず、食らいて其(そ)の味を知らず
(心が散漫して止まるところがなければ、視てもその真実が見えない。聴いてもその真実が聞こえない。また食べても本当の味がわからない)
今月の致知
最新号 5月1日 発行/ 6 月号
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古典・歴史の学びこそ人格を磨く要であり読書文化の復興が人類の命運を決する
中西輝政(京都大学名誉教授)
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読書は国の未来を開く
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山中伸弥(京都大学iPS細胞研究所名誉所長・教授)
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AI時代に負けない生きる力を育む子育て
内田伸子(お茶の水女子大学名誉教授)
川島隆太(東北大学加齢医学研究所教授)