10 月号ピックアップ連載/大自然と体心

睡眠の質が人生の質を決める! 谷川 武(順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学主任教授)

多くの方が悩まれているであろう健康の問題に対し、「体と心は繋がっている」という観点から、読者の皆様に役立つ健康情報をお届けしている連載「大自然と体心」。今月ご登場いただいたのは、近年、「国民の健康・安全に資する睡眠面からの予防医学研究の推進」のテーマで、栄誉ある日本医師会医学賞を受賞された谷川 武さんです。
私たちが生きる上で欠かせないものでありながら、日常生活が忙しいためにコントロールが難しい睡眠。人生の3分の1を使うと言われるこの命の営みを妨げ、疲労感や日中の眠気、高血圧、さらに交通事故のリスクを高めてしまうのが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。
長年の研究を通じて、SASの恐ろしさ、すぐにできる対策を伝えてこられた谷川さん。いびきの問診・検査を当たり前にできる世の中に――強い危機感に基づくお話に、耳を傾ける必要があります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)を早期発見して治療できた場合、本来心臓病になる人の3割、また本来脳卒中を起こす人の3割を未然に守れる

谷川 武
順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学主任教授

突然ですが、あなたはいま、きちんと眠れていますか?
 
人は、人生の3分の1を睡眠に使っているといいます。睡眠の量と質が、人生の豊かさに直結することは言うまでもありません。
 
しかしNHKの調査によると、日本国民の平日の睡眠時間は7時間12分(2020年)と、世界でも群を抜いて短くなっています。この傾向は1970年以降続いており、私たち日本人にとって喫緊の課題なのです。
 
ただ、そうした睡眠の「量」と同じく重要なことがあります。睡眠の「質」です。たとえ「8時間眠れた」と思っても、その質が低ければ2~3時間相当にしかなっていないことがあるのです。
 
その要因は様々考えられますが、特に気をつけるべきは「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。
 
一度は聞いたことがあるでしょう。睡眠中の呼吸停止や低呼吸といった異常な病態を「睡眠呼吸障害(SDB)」といいます。これが深刻化し、1時間あたりの呼吸停止(無呼吸・低呼吸)が5回以上、なおかつ疲労感や日中の眠気、高血圧などの症状がある場合、SASと診断されます。
 
私が1999年以降、20年余り取り組んできたテーマの一つが、このSASと生活習慣病の関係です。まずは過去の実例からお話ししていきましょう。
 
以前、私の講演を聞かれた企業の役員クラスの方が、自分はSASではないかと感じて検査を受けたところ、予想は的中。医師の指示に従い、鼻にマスクをつけ、閉塞した気道が開くように空気の圧を送り込むCPAP(シーパップ/持続陽圧呼吸療法)ですぐ症状は改善されましたが、その際、彼がこぼした言葉が印象的でした。
 
「私は悔しい」
 
理由を尋ねると、彼は役員でありながら「会議になるとすぐ居眠りをする人」と、社内で怠(なま)け者の烙印を捺されていました。本人は会議に真剣に臨んでいるのに、気がつけば寝てしまう。それが病気だと自分を含めて誰も気づかず、説明できなかったからです。
 
SASの怖さ、対策の必要性がお分かりになったと思います……(続きは本誌をご覧ください)
 
 
~本記事の内容~
 ◇人生の豊かさを左右する睡眠の量と質
 ◇睡眠時無呼吸症候群は早期発見・早期治療を
 ◇睡眠の質向上は禁煙にも匹敵する
 ◇不眠を改善する考え方・暮らし方

プロフィール

谷川 武

たにがわ・たけし――昭和36年京都府生まれ。61年神戸大学医学部卒。平成2年東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻博士課程修了。筑波大学講師、米ハーバード大学客員講師、愛媛大学大学院医学系研究科教授などを経て26年から現職。40年にわたり睡眠予防医学など健康・生活に密着した研究に励み、令和5年度「日本医師会医学賞」受賞。


編集後記

睡眠予防医学、とりわけ睡眠時無呼吸症候群の研究で各種メディアに引っ張りだこの谷川武先生。深い学識とユーモアに満ちた方でしたが、お話を伺っていて感じたのは、強い危機感でした。子供も大人も、無関係な話ではありません。現代社会に睡眠の大切さ、激しいいびきがサインとなる睡眠時無呼吸症候群を早期発見・早期治療し、健やかに生きてほしいという願いを感じながら聞かせていただきました。

2026年9月1日 発行/ 10 月号

特集運をつかむ

特集

好評連載

バックナンバーについて

致知バックナンバー

バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます

過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。

定期購読のお申込み

『致知』は書店ではお求めになれません。

電話でのお申込み

03-3796-2111 (代表)

受付時間 : 9:00~17:30(平日)

お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード

FAXでのお申込み

03-3796-2108

お支払い方法 : 振込用紙払い

致知とは? 致知とは?一覧