体でも心でも、汗をかけ 金指 潔(東急不動産特別顧問)

都市事業や住宅事業をはじめとした多岐にわたる事業を展開する東急不動産。長年同社の経営を担い、お客様視点に基づいた改革で大きな躍進へと導いてきたのが、金指 潔氏である。その卓越した経営手腕の礎はどのようにして培われたのだろうか。氏の原点となった若き日の歩みを辿ることで、20代を生きる上で大切な心構えを探る。

目の前の仕事に対して自分が果たすべき役割を考え、一所懸命、必死に打ち込んでいれば、体にも汗をかき、心にも汗をかくだろう。
その汗の一つひとつが、必ず自分の身になると実感する

金指 潔
東急不動産特別顧問

私がどのような20代を歩んできたか。改めて考えると、「信」という言葉が浮かび上がってくる。自分を信じ、人を信じ、積み重ねた努力を信じる。この一字を心に銘記していたからこそ、迫り来る苦難に耐えられたと思う。昨年傘寿を迎えた私の化石のような話が現代を生きる若者の役に立つのかは定かではないが、懸命に汗を流したあの頃を振り返ってみたい。

終戦間近の1945年8月2日、東京・上野で生まれた。親父は生命保険会社に勤めていたが、肺結核を患っていたので、私が幼い頃から入退院を繰り返していた。それでも、親父は少しでも体調が回復すると会社に向かう。病弱な体に鞭打って働く親父の姿から、生きていく大変さを教えられた。

私が幼少期を過ごした1950年代の日本は決して豊かではなかったが、ゆとりのある時代だったと思う。ゆとりとは何か。それは、すべてが成長に向けてスタンバイしていた時代といえる。

戦後の焼け野原からようやく立ち上がり、噴火を待ち侘るマグマのようなものが世の中の至るところに湧き立っていた。そんな希望を感じられたからこそ、皆が明るい未来を信じ、一所懸命汗をかくことを厭わなかったのだろう。

いま思えば、あの時代の潮流を肌で感じられたことは幸運だった。暮らしは裕福ではなかったが、私を大学まで通わせてくれた両親にも感謝している。

そうして迎えた就職活動。私は……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
◇一所懸命の原点
◇お客様は自分の心の鏡
◇「頭から血が出るくらい考えろ」
◇21年の出向生活で得たもの
◇人生は螺旋階段

プロフィール

金指 潔

かなざし・きよし――昭和20年東京都生まれ。43年早稲田大学政治経済学部卒業後、東急不動産入社。52年から平成10年までの21年間、グループ会社に出向する。常務、専務を経て、20年社長に就任。25年ホールディングス体制に移行。27年会長に就任。令和8年より現職。


編集後記

取材は7月28日(火)、渋谷にある東急不動産ホールディングス本社にて行われました。入社当初は不動産の仕事が好きではなかったという金指さんは、いかにして〝ゴッドファーザー〟と称されるに至ったのか。若き日の長い出向生活を交えて語られる不遇や逆境を乗り越えた秘訣など、仕事の神髄が満載です。

2026年9月1日 発行/ 10 月号

特集 運をつかむ

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