越後瞽女・小林ハルの生き方が教えてくれたもの 萱森直子(越後ごぜ唄「さずきもん」主宰)

目の見えない女性、瞽女(ごぜ)が各地を旅しながら三味線の演奏と共に唄った瞽女唄。戦前・戦後の長きにわたり越後瞽女として活躍し、1978年に無形文化財保持者(人間国宝)に認定されたのが小林ハル氏である。2005年に105歳の天寿を全うしたハル氏の最後の弟子である萱森直子さんに、師から学んだ幸せな人生を実現していく秘訣、瞽女唄の伝承と普及にかける思いをお話しいただいた。
【写真=100歳の誕生日を祝う会にて、萱森さんの三味線伴奏に合わせて瞽女唄を披露する小林ハルさん ©毎日新聞社】

人は横の繋がりだけではなく、先人たちの縦の繋がりの中に身を置いた時、自分の生きる意味、本当の幸せを感じられるのだと思うのです

萱森直子
越後ごぜ唄「さずきもん」主宰

皆さんは〝瞽女唄(ごぜうた)〟を知っていますか? 瞽女唄とは、主に目の見えない女性、瞽女が集団で旅をしながら三味線を弾き、唄った唄のことをいいます。昔は一部地域を除いて全国にいたのですが、日本が近代化していく中で次第に少なくなっていき、戦後には現役の瞽女はほぼいなくなりました。

しかし、私の生まれ育った越後(新潟県)には、戦後になってもその伝統が残り、瞽女唄を唄うことのできる瞽女がご存命でした。

その一人が、人間国宝にも認定された私の師匠である越後瞽女・小林ハルさんです。私は晩年のハルさんに11年師事し、現在は弟子のお稽古や演奏会、講演や書籍の出版などを通じて、瞽女唄の伝承と普及に力を尽くしています。

瞽女唄の魅力は、何といってもその圧倒的な迫力、臨機応変の即興性、自由さです。瞽女唄は目の見えない師から弟子へと口伝で伝承されていくため、基本的に譜面がありません。

また、その時のお客さんや状況次第で文句や間を臨機応変に変えることが求められますから、同じ曲でも瞽女によって際限のないほど多くのバリエーションが生じるのです。

特に物語唄は長いもので1段30分×10段ありますが、それを瞽女が即興を交えてダーッと演奏するのを間近で聴くと、その迫力たるや驚いてひっくり返ってしまうほどです。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~(全4ページ)
◇瞽女唄の魅力は迫力と即興性
◇人生の師・ハルさんとの運命の出逢い
◇何としても瞽女の芸を伝えたい
◇人生を導く言葉「さずきもん」「きがまえ」
◇ハルさんとの別れ、そして新たな旅へ
◇瞽女唄を次世代に繋ぐその使命に生きる

本記事では萱森さんに、人生の師・小林ハルさんから学んだよりよく生きるヒント、伝承した瞽女唄を次世代に繋いでいく思いについて語っていただきました。

プロフィール

萱森直子

かやもり・なおこ――昭和33年新潟県生まれ。無形文化財保持者(人間国宝)の長岡瞽女・小林ハル氏に師事。高田瞽女・杉本シズ氏を通して高田系瞽女唄も習得。現在は講演・演奏会、メディア出演、瞽女唄指導などに取り組む。著書に『さずきもんたちの唄 最後の弟子が語る瞽女・小林ハル』(左右社)。演奏や講演情報など詳細は、note『師匠: 萱森 直子 かやもり なおこ-越後ごぜ唄さずきもん』にて掲載。


編集後記

長岡瞽女・小林ハルさんの最後の弟子として瞽女唄の伝承に力を尽くしている萱森直子さん。ハルさんとの出逢い、厳しくも楽しかった稽古、人生の支えにしている師の言葉など、萱森さんが語るハルさんとの日々から、師と弟子を巡る運命の不思議さ、本当の幸せとは何かを教えられます。

2026年9月1日 発行/ 10 月号

特集 運をつかむ

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