剣の道に生きる 伊澤豪人(剣道教士七段)

96歳を迎える伊澤豪人さんは、いまも大会への出場、稽古や後進の指導に打ち込むなど、現役の剣道家として活躍している。その凛とした佇まい、活力はどこから湧いてくるのか――。これまでの歩みと共に、剣道から学んだ人生の要諦をお話しいただく。

私は戦争や戦後の大変な時期を経験してきましたが、やはり人生はなるようにしかならないんですよ。
だから、くよくよ悩んだりせず、人の悪口を言わないで生きることが大事だと思います

伊澤豪人
剣道教士七段

──伊澤さんは、96歳になるいまもなお後進の指導や大会への出場など、剣道家として生涯現役を貫かれているそうですね。凛とした佇まいに圧倒されます。

<伊澤> 
自分では96歳って感じはしないんですよ。私は満洲事変が始まる前の1930年、横浜の生まれなんですね。

まもなく満洲国が建国されて、その観艦式のために御召艦・比叡をはじめ、いろいろな軍艦が横浜港の海の向こうにダーッと並んでいるのを幼い頃に見た記憶が残っています。

アメリカとの戦争では、自宅も空襲で丸焼けになって、すべてを失いました。だから、年齢がどうというより、歴史の教科書に書いてある通りに生きてきたし、それを現実に見て体験してきたんです。

──歴史の生き証人ですね。

<伊澤> 
私からすれば、いまは昔と違って思想統制もない、憲兵や特高(特別高等警察)もいない、様々な面でとても恵まれた時代だと思います。九十幾つといっても、随分羽を伸ばして生きることができています。好きな剣道も自由にできて本当に有り難いことです。

──特に意識して取り組んでいる健康習慣などはございますか。

<伊澤> 
いま稽古は週に3回参加していますが、もう年ですから、必ず30分以上、ウォーミングアップをして体を温めるんです。稽古の前にそこまでウォーミングアップする人はあまりいませんよ。

それに、以前は自動車で通っていたのですが、コロナ禍の時に運転免許証を返納して以来、徒歩と電車で通っています。往復80分ほどかかるので、これがちょうどよい運動になっているんです。

あと、私は朝食を食べたら、昼食までなるべく何も食べないようにしています。昼食後も同じで、間食はしない。常にだらだら食べていたら、胃にお休みがないでしょう? 胃がくたびれてしまいますよ。ただ家内は、3食以外にもあれこれ食べたほうがいいと言うんです。だから、家内とは食事に関しては全然意見が合わないの。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
◇歴史と共に生きてきた
◇よき師匠との出逢いに恵まれて
◇くよくよしないで元気に生きる

本記事では96歳現役剣道家の伊澤さんに、勝負の極意、健康長寿と死後までイキイキ生きるヒントを語っていただきました。

プロフィール

伊澤豪人

いざわ・ごうじん――昭和5年神奈川県生まれ。小学3年生の時に町道場で剣道を習う。戦争・終戦を経て、横浜商業(現・横浜市立横浜商業高等学校)を卒業。劇団関係の仕事をする傍ら、新宿区剣道連盟にて再び剣道を始める。剣道教士七段。平成27年「剣道有功賞」を受賞。


編集後記

96歳とはとても思えない凛とした佇まいで、私たちを出迎えてくださった伊澤豪人さん。取材中は笑顔の絶えない気さくな伊澤さんでしたが、撮影時に剣を構えていただくと、表情と雰囲気が一変、勝負に生きる剣士の迫力に圧倒されました。伊澤さんが96年の歩みの中で掴んだ勝負、人生の極意に学びます。

2026年9月1日 発行/ 10 月号

特集 運をつかむ

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