10 月号ピックアップ記事 /インタビュー
当たり前に思える一つひとつが奇跡そのもの 山下欽也(岩泉ホールディングス社長)

日本初のアルミパウチ(アルミ性の袋)入りヨーグルト「岩泉ヨーグルト」を筆頭に、岩手県岩泉町の自然の恵みと手間隙をかけた製法にこだわった数々の商品が人気を博す岩泉ホールディングス。かつては3億円近くの累積赤字がありながらも、今日の発展を遂げるに至ったのはなぜか。創業5年目の社長就任以来、同社を牽引してきた山下欽也氏にその挑戦の軌跡を伺う中で見えてきたもの。それは、運をつかむ要訣に他ならない。

自分の周りにある、当たり前に思える一つひとつが奇跡そのもの。
つまり、当たり前だと思っていたものが当たり前ではないと気がついた時に、奇跡は起こるんです
山下欽也
岩泉ホールディングス社長
〈取材は東京から新幹線と車で約5時間半、美しい山々に囲まれた岩手県岩泉町にある岩泉ホールディングス本社にて行われた〉
――大谷翔平選手が〝世界一〟と絶賛するヨーグルトのメーカーがあると伺い、やってまいりました。
〈山下〉
ここ岩泉町は町で本州一の広さを誇り、総面積の93%を山林が占めています。そのため山の恵みが非常に豊富で、明治時代から産業として酪農が根づいてきました。当社の前身となる岩泉乳業は2004年に創業され、以来乳製品を筆頭に岩泉町の素材を生かした商品開発を続けています。
中でも、日本初のアルミパウチ入りヨーグルト「岩泉ヨーグルト」は今年発売から18年を迎えました。その人気に火をつけてくれたのは、紛れもなく大谷選手です。3年前に地元・岩手の名物を尋ねられた大谷選手の記事が公開されるや否や、通販の売り上げが7倍に跳ね上がりましてね。製造が追いつかないほどの反響でした。
いまでは全国47都道府県のスーパーにまで販路を広げ、1日の製造量は平均15トン。一人あたりの食事量を1日100グラムで換算すると、約15万人の方々が毎日私たちのヨーグルトを食べてくださっていることになります。
――人々を虜にする岩泉ヨーグルトの魅力を教えていただけますか。
〈山下〉
大きな特徴は、もっちりとした食感、地元で取れる新鮮な生乳ならではの風味でしょうね。この独特の食感と深い味わいを生み出しているのが、「低温長時間発酵」という製造方法です。
乳業メーカーの大半は大量生産するために、可能な限り温度を上げ、短時間で発酵させます。一方、我々は通常の4倍ほどの18~20時間かけ、低温でじっくり発酵させる。コストと手間隙を惜しまないことで、より生乳に近い風味を保つことができるんです。
ただ、老若男女から支持される一番の理由は、商品力ではないと思っています。当社は商品を通して、……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全5ページ)
◇ロングセラーの秘訣は町の魅力を伝えること
◇人が嫌がる仕事を率先してやる
◇累積赤字2億8,000万円を抱えて社長就任
◇日本初のアルミパウチ入りヨーグルト誕生秘話
◇追い詰められた時に踏み留まれるか
◇再起する原動力となった1,000通の手紙
◇運は誰しも平等に目の前にある
プロフィール
山下欽也
やました・きんや――昭和31年岩手県岩泉町生まれ。50年岩泉高等学校卒業後、農業の専門学校に入学。51年JA岩泉町に入組。平成17年岩泉乳業に入社。工場長を経て、21年社長に就任。28年ホールディングス体制に移行。著書に『あたりまえという奇跡』(センジュ出版)がある。
編集後記
東京から新幹線と車で約5時間半。降り立った岩泉町は本州の町の中で最も広大な面積を誇り、総面積はおよそ993平方キロメートル。東京23区と横浜市を合わせた広さに匹敵します。そのほとんどを山林が占めていることもあり、透き通った空気と心地よい鳥のさえずりに癒されました。取材前には、岩泉ホールディングスが運営する「道の駅いわいずみ」を見学し、岩泉の生乳を練り込んだイタリアンジェラート「ViTO × IWAIZUMI」に舌鼓を打ちました。岩泉町の自然の恵みに焦点を当てた商品開発を続ける山下社長の愚直な実践、波瀾万丈な人生に胸を熱くします。

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