10 月号ピックアップ記事 /エッセイ
恭黙の人・貝原益軒に学ぶ運命をひらく極意 山崎光夫(作家)

平均寿命が40歳前後だった江戸時代に、85歳の長寿を全うしただけでなく、いまも読み継がれる名著『養生訓』をはじめ、生涯を通じて膨大な著作を生み出した貝原益軒。生来の虚弱体質、藩主による理不尽な処罰など、益軒は人生の苦難をいかに乗り越え、健康長寿、生涯現役を実現できたのか。その養生、よりよい人生をつかむ極意を、益軒を長年研究してきた作家・山崎光夫氏に紐解いていただいた。
【写真=貝原益軒が、日々処方した薬について詳細に記した『用薬日記』。益軒の当時の体調、心身の不調にどのように対処したかが分かる貴重な資料である】

貝原益軒坐像(福岡市中央区今川、金龍寺)
©(一社)曽田豊二記念養生訓の里ネットワーク

益軒に学び、私自身が理想にしているのは「平凡な日常、非凡な人生」です。
朝起きて食事をしてから仕事や勉強に励み、夜になったら眠る。この当たり前の日常を積み重ねて、健康を保つ。
その結果として益軒のように最晩年まで仕事をし、非凡な人生を実現することができれば、それ以上に幸せなことはありません
山崎光夫
作家
心身の養生法を説いた『養生訓』で知られる江戸時代の儒者・貝原益軒(1630~1714年)。
私がその存在を知ったのは、雑誌記者として、主に医学関係の取材をしていた30代の頃でした。全国の医者、様々な健康法を取材していく中で必然的に益軒に辿り着いたのです。
最初に手に取った『養生訓』を一読し、何より驚いたのは、江戸時代に説かれた内容であるにも拘らず、ほとんどが現代でも通用していることです。それは、益軒の養生法が机上の空論ではなく科学主義、実証主義に基づいているからに他なりません。
例えば、益軒は22歳年下の夫人・東軒と共に、生涯5回にわたり体重を記録しています。江戸時代に体重計はありませんから、分銅を載せて重量を量る棹秤(さおばかり)、それも人が載れる大型のものを使ったのでしょう。当時そこまでして体重を記録した人は、世界でも唯一だったのではないでしょうか。
私はその体重記録を基に、江戸時代の日本人の平均身長を益軒夫妻に当てはめ、2人の肥満度指標BMI(ボディ・マス・インデックス)を割り出してみました。
すると、益軒は82歳の最晩年こそ「痩せ気味」だったとはいえ、肥満からはほど遠く、長寿を得やすい体型でした。一方、東軒は早くに「痩せ」の領域に入り、亡くなる2年前、60歳の時にはかなり痩せていたことが分かりました。
当時の日本人の平均寿命は40歳前後でしたから、益軒夫婦は共に長寿を全うしたと言えます。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全4ページ)
◇実証主義に貫かれた貝原益軒の養生法
◇逆境に耐え忍び成長の糧とする
◇健康長寿の基本は、「畏」「慎」「少」「忍」
◇幸せな人生は正しく生きる道にある
本記事では山崎さんに、貝原益軒に学んだ健康長寿、本当の幸せをつかむ極意を紐解いていただきます。
プロフィール
山崎光夫
やまざき・みつお――昭和22年福井県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、放送作家、雑誌記者を経て小説家に。主に医学薬学関係の小説、ノンフィクション、エッセイを発表している。『安楽処方箋』(講談社)で小説現代新人賞受賞。『藪の中の家─芥川自死の謎を解く』(文藝春秋)で新田次郎文学賞受賞。『殿、それでは戦国武将のお話をいたしましょう-貝原益軒の歴史夜話』(中央公論新社)『心と体のことわざ養生術 五〇歳から貝原益軒になる』(講談社)など著書多数。日本文芸家協会会員、日本医史学会会員、福井ふるさと大使、森鷗外記念会評議員、新田次郎記念会評議員なども務める。
編集後記
『養生訓』など養生法の大家として知られる貝原益軒。しかし、その実像や業績の全体像は、あまり知られていません。長年益軒と向き合ってきた作家の山崎光夫さんに、「日本のアリストテレス」とも称された益軒の教えの核心、真の健康長寿に至る道を説いていただきました。

特集
ピックアップ記事
-
対談
運をつかむ生き方
坂口志文(大阪大学特別栄誉教授)
北川 進(京都大学副学長)
-
対談
何が勝運を呼び寄せるのか
王 貞治(福岡ソフトバンクホークス会長)
栗山英樹(北海道日本ハムファイターズCBO)
-
対談
あの日から私の経営者人生は始まった ~妻の経営奮闘記~
山本久美(エスワイフード代表)
山口久美子(玄品グループ関門海社長)
-
エッセイ
人生の主役は自分 ~小出義雄監督と共に歩んで~
有森裕子(元女子マラソン日本代表)
-
エッセイ
恭黙の人・貝原益軒に学ぶ運命をひらく極意
山崎光夫(作家)
-
インタビュー
当たり前に思える一つひとつが奇跡そのもの
山下欽也(岩泉ホールディングス社長)
-
インタビュー
人間学の学びが僕の運命を変えた
亀井潤一郎(大阪府堺市倫理法人会会長)
-
インタビュー
人間教育で勉強も人生も大逆転が起きる
木村吉宏(ヒューマレッジ創業者)
-
エッセイ
越後瞽女・小林ハルの生き方が教えてくれたもの
萱森直子(越後ごぜ唄「さずきもん」主宰)
好評連載
バックナンバーについて
バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます
過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。
定期購読のお申込み
『致知』は書店ではお求めになれません。
電話でのお申込み
03-3796-2111 (代表)
受付時間 : 9:00~17:30(平日)
お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード







