10 月号ピックアップ記事 /対談
運をつかむ生き方 坂口志文(大阪大学特別栄誉教授) 北川 進(京都大学副学長)

昨秋、我が国に光をもたらすニュースが飛び込んできた。2人の日本人によるノーベル賞同時受賞の快挙である。坂口志文氏(写真右)は、制御性T細胞の発見で生理学・医学賞を受賞。これにより様々な難病治療の道が開かれることが期待されている。一方の北川進氏(写真左)は、多孔性金属錯体の開発で化学賞を受賞。行き詰まりを見せる資源やエネルギー、環境などの問題解決に繋がるという。人類の未来に大きく貢献するする業績はいかにして実現したのか。偉業を成し遂げた2人の人間力の源泉に迫る。

自分の能力を悲観的に捉えず努力を続けていくと、思いがけない外的要因に恵まれて成功に至ることがあります
坂口志文
大阪大学特別栄誉教授
〈北川〉
坂口先生とは、昨秋共にノーベル賞を受賞して以来、随分いろんな所へご一緒させていただきましたね。
〈坂口〉
政府への陳情や講演が相次いで、とても忙しい時期が続きましたね。やっと最近になって研究室で学生の指導に時間を使えるようになりつつありますが、まだ完全には元の状態に戻っていません。私の仕事は人の役に立ってなんぼというところがありますから、早く受賞前の状態に戻りたいところです(笑)。北川先生のほうはいかがですか。
〈北川〉
ご承知のように、この京都大学は2年半くらい前から、国の支援を得て研究強化を図るための国際卓越研究大学の認定準備を進めてきました。私は研究と共に、大学の副学長や研究担当理事も兼務しているので、ものすごく忙しいんです。そこへ政府から、坂口先生と一緒に陳情に行け、講演に行けといろいろ要請をいただくものだから全く時間がない(笑)。いまは体調に気をつけることが一番の課題ですね。
〈坂口〉
北川先生はいつもこちらの京都大学高等研究院で研究をなさっているのですね。
〈北川〉
ええ。私がやっているのは基礎的な化学で、誰もできなかったことにチャレンジして実現することに燃えているわけです。ですから、ここはそのための私の城なんですよ。早くこの城で研究に没頭する毎日を取り戻したいですね(笑)。

自分の中に様々なものを蓄積し、平素から怠らず努力を重ねていくことで運は開けていくと私は考えています
北川 進
京都大学副学長
〈坂口〉
それにしても、同じ年にノーベル賞を受賞した我々2人が、同じ大学の同学年だったというのは実に奇遇ですね。
〈北川〉
お互いにクラスが違うから、在学中は全くご縁がありませんでしたけれどね。
〈坂口〉
ただ、北川先生のことはノーベル賞を受賞する前から存じ上げておりました。金属有機構造体の研究で学士院賞を取られたりして、とても有名でしたからね。
〈北川〉
少し接点もありましたね。この高等研究院の前身である物質―細胞統合システム拠点で副拠点長を務めていた時に、初代拠点長の中辻憲夫先生を通じて坂口先生のご活躍ぶりは伺っていました。
〈坂口〉
20年近く前のことですから、当時は北川先生と同じ年にノーベル賞を受賞することなど、考えも及びませんでした。ノーベル賞は国ごとに競うものではありませんが、それでも同じ年に日本から2人、別の分野で受賞できたことで、日本の国全体に明るいニュースをもたらすことができたのはよかったと思っています。
〈北川〉
私は、まさか坂口先生に続いて自分も受賞するとは思いませんでした。実は受賞の連絡をもらったのが、詐欺の電話がかかってきた30分後でしてね。最初は怪しいなと思いましたが、先方は英語でしたし、選考委員長や専門分野の方が交替できちんと説明してくださったので、「あ、これは本当やな」と(笑)。……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全10ページ~
◇同窓、同学年の2人が共にノーベル賞を受賞
◇人類の未来に寄与する2つの偉大な業績
◇読書は自己の鍛錬になる
◇研究者としての礎になったもの
◇病気の後ろにある原理を追究したい
◇人が目を向けていないものに可能性がある
◇何事にも囚われず興味のあるところに遊ぶ
◇興味を持てることをとことん追究する
◇マイナーな研究が途轍もない金鉱だった
◇幸運は準備された心に宿る
◇夢を持ち努力を重ねていくこと
プロフィール
坂口志文
さかぐち・しもん――昭和26年滋賀県生まれ。51年京都大学医学部医学科卒業。同大学院医学研究科入学。52年愛知県がんセンター研究所実験病理部門研修生。58年京都大学医学系研究科博士号取得。同年より渡米し、ジョンズ・ホプキンス大学客員研究員等を務める。平成4年帰国。京都大学再生医科学研究所所長などを経て、23年大阪大学免疫学フロンティア研究センター実験免疫学教授。現在は同大学特別栄誉教授。令和7年ノーベル生理学・医学賞受賞。
北川 進
きたがわ・すすむ――昭和26年京都府生まれ。49年京都大学工学部石油化学科卒業。54年同大学院工学研究科博士課程修了。近畿大学理工学部助手。その後同大学理工学部助教授、東京都立大学理学部教授を経て、平成10年京都大学大学院工学研究科教授。さらに同大学高等研究院物質─細胞統合システム拠点 拠点長などを経て、現在は、同大学理事、副学長、高等研究院特別教授。28年日本学士院賞。令和7年ノーベル化学賞受賞。
編集後記
昨年10月、2人の日本人がノーベル賞を同時受賞したことは記憶に新しいでしょう。本誌1月号「特集総リード」でも紹介したように、生理学・医学賞を受賞した坂口志文さんと化学賞を受賞した北川進さんは共通点が多く、すぐに対談を企画。ご多忙ゆえに一度は辞退の連絡を受けたものの、約1年越しで掲載に漕ぎ着けることができました。「幸運は準備された心に宿る」「運・鈍・根」など、超一流の科学者が大切にしている心懸けや思考法に学びます。

特集
ピックアップ記事
-
対談
運をつかむ生き方
坂口志文(大阪大学特別栄誉教授)
北川 進(京都大学副学長)
-
対談
何が勝運を呼び寄せるのか
王 貞治(福岡ソフトバンクホークス会長)
栗山英樹(北海道日本ハムファイターズCBO)
-
対談
あの日から私の経営者人生は始まった ~妻の経営奮闘記~
山本久美(エスワイフード代表)
山口久美子(玄品グループ関門海社長)
-
エッセイ
人生の主役は自分 ~小出義雄監督と共に歩んで~
有森裕子(元女子マラソン日本代表)
-
エッセイ
恭黙の人・貝原益軒に学ぶ運命をひらく極意
山崎光夫(作家)
-
インタビュー
当たり前に思える一つひとつが奇跡そのもの
山下欽也(岩泉ホールディングス社長)
-
インタビュー
人間学の学びが僕の運命を変えた
亀井潤一郎(大阪府堺市倫理法人会会長)
-
インタビュー
人間教育で勉強も人生も大逆転が起きる
木村吉宏(ヒューマレッジ創業者)
-
エッセイ
越後瞽女・小林ハルの生き方が教えてくれたもの
萱森直子(越後ごぜ唄「さずきもん」主宰)
好評連載
バックナンバーについて
バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます
過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。
定期購読のお申込み
『致知』は書店ではお求めになれません。
電話でのお申込み
03-3796-2111 (代表)
受付時間 : 9:00~17:30(平日)
お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード







