10 月号ピックアップ記事 /対談
あの日から私の経営者人生は始まった ~妻の経営奮闘記~ 山本久美(エスワイフード代表) 山口久美子(玄品グループ関門海社長)

特製「幻の手羽先」で人気を博す居酒屋「世界の山ちゃん」と、最高級魚として知られるとらふぐを通年、廉価で味わえる専門店「玄品」。共に個人店から海外展開まで果たした有名チェーンである。しかしその道程には創業者急逝という岐路があった。最愛の夫を失う悲運を受け止め、主婦からそれぞれ経営を引き継いだ山本久美代表と山口久美子社長。二人の奮闘記に、運をつかむヒントを探る。

ずっとくよくよしていても仕方ないので、いい方向に変換してみる。
すると、少しだけ自分の〝悪くない運〟に気づけます
山本久美
エスワイフード代表
〈山本〉
きょうは暑い中、素敵なお着物でお越しいただいて、ありがとうございます。
〈山口〉
こちらこそありがとうございます。同じ女性経営者として、前々から山本代表のご活躍は拝見していました。そうしたらこの間、ある女性の会で隣のお席になれて「あっ、『世界の山ちゃん』の!」って、嬉しくてお声がけさせてもらったんですよね。
〈山本〉
去年の11月でしたね。実は随分前に、名古屋で弊社のお店が入ったビルの真下の階に御社の「玄品(げんぴん)」が入っていて、私も息子と食事に行っていたんです。
〈山口〉
ええ、そうだったんですか。ありがとうございます。それにしても、私たちは名前からして、よく似ていますよね。
〈山本〉
本当に。主人が亡くなったこと、主婦から経営者になったことを振り返って、そう思います。
〈山口〉
私の中学時代からの親友が「山ちゃん」の大ファンで、お父さんがよく出張のお土産に「幻の手羽先」を買ってきてくれたので私も好きになりました。今年もう創業45周年なんですね。
〈山本〉
はい。弊社の看板商品はやはり「幻の手羽先」です。創業者である主人・山本重雄が生み出した、コショウ辛さがクセになる一号店の頃から人気の一品です。
私が代表に就いた2016年はお店も増えて、味にばらつきが出ていましたが、うちはあのコショウ辛さで愛されてきたのだから、原点の味に立ち返ろう。そう訴えて味の統一を進めてきました。
一方、弊社には手羽先を超える商品をつくるための「打倒手羽先の会」という会議もあるんです。

人生の大事なカードをつかむかどうかは自分次第。それには自分の心をいつも覚醒させておかないといけません
山口久美子
玄品グループ関門海社長
〈山口〉
打倒手羽先、ですか。
〈山本〉
はい。ただ、手羽先を100点満点とすると、簡単にはいきません。ですから私は「ハズレの商品をつくらない」を合言葉に、全商品が70点以上のおいしさになるよう、社員と全国の店舗を回って検食をし、研究に勤しんでいます。
とにかく「山ちゃんに来て『楽しかった』『おいしかった』」と言っていただけるお店にしたい、これは変わらない思いです。おかげさまでいまは、国内と海外で94店舗を展開できています。
〈山口〉
そういう思いであのお店ができているんですね。ちなみに、ご主人は何年生まれですか?
〈山本〉
1957年、私とは10歳差でした。山口社長のご主人も年上でいらっしゃいましたよね。
〈山口〉
そうなんです。1961年生まれ、11歳年上でした。その主人・山口聖二が1980年、地元大阪で開いたお店が「玄品」の始まりでした。
高級魚として有名なふぐの中でも、一番美味で高級なとらふぐは当時、所得の高い層でないと滅多に口にできない食材でした。これを広く一般に手が届くものにしたい、それが主人の最初の志です。
ふぐは下関の市場から仕入れるのが常識でしたけれど、主人は幾つかの養殖場から一括購入して、通年安定した価格でご提供できる体制を整えました。当時で「てっちり(ふぐ鍋)1,980円、てっさ(ふぐ刺し)980円」を打ち出して、評判になったんです。……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全10ページ~
◇ファンを増やし続ける2人の女性経営者
◇幻の手羽先と熟成とらふぐ
◇「世界の山ちゃん」はこうして羽ばたいた
◇〝真面目な変人〟山本重雄会長
◇社員と家族に等しく愛を注いだ山口聖二社長
◇「てばさ記」に気づかされた思い
◇溢れ出た感謝と会社を守る覚悟
◇主婦から経営者へと踏み出して
◇「脱会長」で思いを引き継ぐ
◇忘れられた遺産に命を吹き込む
◇未曽有の危機にチャンスをつかむ
◇運命の女神はどんな人に微笑むか
プロフィール
山本久美
やまもと・くみ――昭和42年静岡県生まれ。愛知教育大学卒業後、愛知県内で小学校教員になる。小学生のミニバスケットボールクラブを創設し、3度の全国優勝を果たす。平成12年エスワイフード創業者・山本重雄氏との結婚を機に専業主婦に。28年重雄氏の急逝に伴い入社、代表取締役となる。
山口久美子
やまぐち・くみこ――昭和47年大阪府生まれ。平成4年帝塚山学院短大卒業後、関門海創業者・山口聖二氏と結婚。17年の聖二氏急逝から7年後の24年関門海入社。CI推進部、執行役員を経て29年副社長、30年より社長。令和5年「女将のカウンター」を開き、週1回自ら現場にも立つ。
編集後記
「世界の山ちゃん」と「玄品」。ご主人の急逝を機に有名飲食チェーンを引き継いだ山本久美代表と山口久美子社長には不思議なほど共通点が多く、笑いあり涙ありの対談となりました。実は、亡きご主人も共に『致知』の愛読者だったといいます。「悪い運をいい方向に変換する」「人生の大事なカードをつかめるかは自分次第」。2人の等身大の言葉から、悲運を福に転じるヒントを得られるでしょう。

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