コンプレックスは武器になるコシノジュンコ（デザイナー）

時代を先取りする斬新な発想で、ファッション界をリードし続けてきたコシノジュンコ氏。だんじり祭で有名な大阪の岸和田に生まれたコシノ氏を、世界の舞台で活躍するプロに大成させたものは何だったのか。そのユニークな足跡を通じて、人生を切り開くヒントを探った。

私はやる。そう覚悟を決め、勇気を持って前進を続ければ、大抵のことはやり遂げられるものです

コシノジュンコ
デザイナー

「これだけ才能があるのに、なぜお母さんと同じ仕事を目指さないのですか？」

高校時代、スタイル画の原雅夫先生から投げかけられたこの言葉によって、私の人生は定まりました。

私は、大阪の岸和田で洋裁店を営む母のもとで3姉妹の二女として生まれました。3人の中でも一番のお転婆娘だった私は、優等生の姉が母の店を継ごうとしていたことへの反発もあり、姉とは異なる道へ進もうと考えていました。元々油絵が好きで、高2の時に有力な美術展で入選を果たしたことで自信を得て、将来は画家になることを夢見ていたのです。

ところが、姉がお世話になっていた原先生が自宅へお越しになる機会があり、私の絵を見ておっしゃったのが冒頭の言葉でした。

なぜ画家ではなく、ファッションデザイナーなの？

最初は随分戸惑いましたが、原先生ほどの方がおっしゃることなら、と心を動かされて方向転換。高校を卒業すると上京し、先生も顧問を務めておられた文化服装学院に入学して、ファッションデザイナーを目指すことにしたのです。

いまは、それが私の運命だったのだと受け止めています。

〔写真提供＝JUNKO KOSHINO〕