2 月号ピックアップ記事 /インタビュー
化学的リサイクルで資源の争いのない世界を実現する 岩元美智彦(JEPLAN会長)

天然資源に乏しく、その大部分を他国に依存している日本。しかしそんな中で、数百の大企業や自治体と提携し、使い終わった古着やペットボトルなどの資源を独自の仕組みと技術で新品とほぼ同等品質に再生する企業がJEPLANだ。若いベンチャーでありながら奮闘する同社の共同創業者・岩元美智彦氏に、事業発展の要因、これからの日本企業が進むべき道を伺った。
〔本文写真提供=㈱JEPLAN〕

やはり「何のためにやるのか」が大事で、リサイクルは皆で手を取り合って仕組みをつくらないと絶対にできません。
その考え方をどれだけ時間がかかっても染み込ませる。それまでは引かない覚悟でやっていきました
岩元美智彦
JEPLAN会長
――役目を終えた古着やペットボトルなどを、新品とほぼ同等品質に生まれ変わらせる、夢のようなリサイクルシステムを確立された会社があると伺ってまいりました。
〈岩元〉
地球上にゴミは存在しないということを何とか証明したい、その一心で取り組んできました。
これまで、リサイクルというと「物理的リサイクル」が主流でした。例えばペットボトルなら簡単に言うと集めたものの中から使えるものを砕いて洗って、再利用する。ただしこの手法だとペットボトルに付着した色や汚れを取り切ることは難しいので、リサイクルできる回数や再生した素材の用途が限られるという課題があります。
対して私共が独自に開発した技術は「化学的リサイクル」で、ペットボトルを新品とほぼ同等品質の樹脂に再生し、繰り返し何度でもリサイクルすることが可能です。
――どのような技術なのでしょうか?
〈岩元〉
当社ではペットボトルをまず分子レベルまで分解します(解重合)。すると色や汚れ、添加物を除きやすくなります。これを精製し、結合させる(重合)。こうすると物質が劣化しないで再生することができるんです。
そのため何度も繰り返しリサイクルすることが可能になります。
――すぐには信じ難い技術です。
〈岩元〉
1年ほど前、当社はこの川崎にペットボトルを化学的リサイクルで循環させる商用プラントを稼働させました。さらに北九州にあるプラントでは、携帯電話や、当社の仕組みで回収した洋服(ポリエステル100%繊維)をリサイクルしています。
――資源が乏しい日本では喫緊の課題に取り組まれている。
〈岩元〉
私共のこうしたビジョン、取り組みに共感し、取り引きをしてくださっている企業や自治体は年々増えています。ペットボトル一つとっても、これを化学的リサイクルすれば、限りある地下資源、石油の使用が削減されます。皆が参加することで循環型社会は実現できるんです。2007年、現社長の髙尾正樹と二人で会社を立ち上げた時からずっとそれを訴え続けてきました。
=写真=
往年の映画ファンを熱狂させ、世界に社の存在を知らしめた「デロリアン」(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場)実走行イベントの様子(2015年、東京お台場)
―□■―□■―□■―□■―
古着やペットボトル、携帯電話から取り出した金属を見事に生まれ変わらせる技術。
それだけでも驚きですが、岩元会長と共同創業者の髙尾正樹社長は、世の中にリサイクルの仕組みまでも根づかせ、若いベンチャーでありながら他にはないブランドを確立して存在感を増されています。
記事では
◆地球上にゴミは存在しないと証明したい
◆人の意識は法律では変わらない
◆世界的に遅れている繊維リサイクルの道へ
◆飛躍の機会をくれた大恩人
◆大企業と消費者を巻き込む仕組みをつくる
◆地球に最も貢献する人が最も幸せになる
等々、「SDGs」という言葉が市民権を取得する以前、環境やリサイクルといった問題への関心が低かった15年前から一貫してビジョンを持って走り続ける岩元会長と同社の歩みを紹介しました。

全国の提携小売店に置かれ、リサイクルの入り口になっている「BRING™」の古着回収ボックス。
人間社会の経済・環境・平和を資源の循環で実現したいという岩元氏の願いが込められたハチマークがあしらわれている
プロフィール
岩元美智彦
いわもと・みちひこ――昭和39年鹿児島県生まれ。北九州市立大学卒業後、繊維専門商社に就職。平成7年容器包装リサイクル法の制定を機に繊維リサイクルに深く携わる。19年42歳の時に現社長の髙尾正樹氏と共同で日本環境設計(現・JEPLAN)を創業。27年アショカフェローに選出。28年より会長。著書に『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)がある。
編集後記
日本が抱えている経済・環境・平和の問題。これらを資源の循環、化学的リサイクルによる仕組みづくりで一挙に実現する――。
「なんだか、できそうでしょう?」
取材の終盤、そして帰り際にも、岩元美智彦会長は繰り返しおっしゃいました。
普通に考えれば一企業に扱える問題ではありませんが、数多の支援を得てつくり上げた他にはないリサイクル技術と、国内外の大企業や自治体を巻き込んで資源が循環する仕組みをつくっている具体例を見せられ、希望を感じました。

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