中江藤樹と石田梅岩——二人の先哲が教えるもの 田口佳史(東洋思想研究家) 中江彰(国際中江藤樹思想学会理事長)

江戸時代、人間の本質を突き詰め、人としての道を庶民に説き続けた2人の先哲がいた。「近江聖人」と仰がれた中江藤樹と「石門心学」の祖とされる石田梅岩である。日本精神の礎となった2人の足跡は、混迷を続けるいま日本人に一筋の光明となるものである。2人の先哲の生き方について東洋思想研究家の田口佳史氏と、国際中江藤樹思想学会理事長・中江彰氏に語り合っていただいた。

石田梅岩と松下幸之助さんの説く考えはとても似通っているものがあって、これこそが経営論の本質だと思うんです

田口佳史
東洋思想研究家

ここのところは梅岩教学の要点となる部分だと思うのですが、彼が説いた商人道はいまのような金銭至上主義の経営学、経済学ではないんですね。

もちろん、経営にも商業にも役立つものであることは確かでしょう。

しかし、それ以上に人間としていかに立派な生き方をするかという、人間の本質を突き詰めている。

いろいろな学問を身につけた中江藤樹ですが、最後には明徳という一点に焦点を定めて、それを人々に伝えようとしたのではないでしょうか

中江彰
国際中江藤樹思想学会理事長

藤樹の『鑑草』に次のような言葉があります。

人間は明徳仏性をもて根本として生まれたる物なれば、誰も此性なきものはなし。

この性は、人の根本なるによって、又本心とも名づけたり藤樹は庶民に馴染みのある仏性という言葉とセットにして「明徳仏性」、つまり、明徳と仏性は同じものだと明解に述べています。

プロフィール

田口佳史

たぐち・よしふみ―昭和17年東京都生まれ。新進の記録映画監督としてバンコク市郊外で撮影中、水牛2頭に襲われ瀕死の重傷を負う。生死の狭間で『老子』と運命的に出会い、「天命」を確信し、東洋思想研究に転身。「東洋思想」を基盤とする経営思想体系「タオ・マネジメント」を構築・実践し、1万人超の企業経営者や政治家らを育て上げてきた。配信中の「ニュースレター」は英語・中国語に翻訳され、海外でも注目を集めている。主な著書(致知出版社刊)に『「大学」に学ぶ人間学』『「書経」講義録』他多数。

中江彰

なかえ・あきら―昭和28年大阪府生まれ。佛教大学文学部史学科卒。花園大学大学院文学研究科修士課程修了(仏教学)。近江聖人中江藤樹記念館館長を経て現在国際中江藤樹思想学会理事長。著書に『中江藤樹一日一言』『中江藤樹人生百訓』(共に致知出版社)『中江藤樹のことば』(登龍館)など。


編集後記

最後の対談は、積善の大切さを説き、多くの人々を感化し、日本精神に影響を及ぼした中江藤樹と石田梅岩の教えに光を当てました。東洋思想研究家・田口佳史さんと国際中江藤樹思想学会理事長・中江彰さんのお話から、二人の先達の生き方・考え方の本質が見えてきます。

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