何が国を豊かにするのか 藤原正彦(お茶の水女子大学名誉教授) 櫻井よしこ(国家基本問題研究所理事長)

いま我が国は様々な内憂外患を抱えている。
かつて吉田松陰は「天下の大患は其の大患たる所以を知らざるにあり」と言った。
私たちが直面している問題の本質とは何か。どこにその根本原因があり、いかなる手を打っていけばよいか。
保守論壇の重鎮である藤原正彦氏と櫻井よしこ氏に、豊かで徳の溢れる国づくりへの道筋を大所高所から論じていただいた。

自国の歴史や古典を学ぶことによって、日本自身のよきものに目を向けることが大事です

櫻井よしこ
国家基本問題研究所理事長

本を読むことの延長線上にあるのが日本の歴史を学ぶということです。それが軽んじられるようになりました。ここまで自分の民族の歴史を蔑ろにする国は他にないのではないでしょうか。歴史を知らない民族は自分自身がないわけですから、新しく入ってくるものに流されてしまう。

日本人らしい価値観は、どこの国にも負けない、一人ひとりの人間を大事にする価値観です。7世紀初頭に聖徳太子がつくられた「十七条憲法」がそれをよく表現しています。「十七条憲法」の精神はいまの時代にも十分通用します。

他にも『万葉集』をはじめ日本には素晴らしい文化がある。にも拘らず、そうしたことへの理解がないために、アメリカのポップカルチャーなどを至上の文化と捉えて、そちらにばかり魅かれていく。ポップカルチャーもよいのですが、日本自身のよきものに目を向けることが大事です。

先人たちは歴史をよく学んでいたと思います。日本の歴史、古典によく通じていたことが、先人たちの教養の基礎だったはずです。それが戦後はおよそすべて置き去りにされています。

世界を救うには日本の武士道精神、惻隠の情、これ以外にないと私は思っているんです

藤原正彦
お茶の水女子大学名誉教授

読書と言ったって何も人生論とか哲学の本を読まなきゃいけないってことは全くありません。はっきり言うと講談本でもいいんです。江戸時代、ほとんどの武士の家には「四書五経」がありましたが、大抵の庶民は日本の古典に加え、青本や黄表紙、講談本などを読んでいました。

明治末期から大正にかけて、「立川文庫」という少年向けの講談の文庫シリーズがあり、私の父もそうですし、川端康成とか谷崎潤一郎、あるいは湯川秀樹とか朝永振一郎、彼らは皆、立川文庫で育ったと言っています。

楠木正成とか荒木又右衛門とか柳生十兵衛とか真田十勇士の霧隠才蔵や猿飛佐助とか、私も小学校から中学校にかけて片端から読みましたよ。シェークスピアと同じように、風刺に加え涙と笑いが同居している。

義理、人情、忠孝、正義、そして一番重要なのは惻隠の情。要するに弱者への同情、共感、涙。こういう道徳を本を通して自然な形で学んだんですね。

プロフィール

藤原正彦

ふじわら・まさひこ――昭和18年旧満州新京生まれ。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。理学博士。コロラド大学助教授などを経て、お茶の水女子大学教授。現在は同大学名誉教授。53年に数学者の視点から眺めた清新な留学記『若き数学者のアメリカ』(新潮文庫)で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。ユーモアと知性に根ざした独自の随筆スタイルを確立する。280万部の大ベストセラー『国家の品格』(新潮新書)をはじめ著書多数。最新刊に『日本人の真価』(文春新書)。

櫻井よしこ

さくらい・よしこ――ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスターなどを経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年に国家基本問題研究所を設立し、理事長に就任。23年第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。著書多数。最新刊に『わが国に迫る地政学的危機 憲法を今すぐ改正せよ』(ケント・ギルバート氏との共著/ビジネス社)。


編集後記

大ベストセラー『国家の品格』で知られる数学者の藤原正彦さんと、鋭く本質を突いた言論活動を展開するジャーナリストの櫻井よしこさん。お二人が口を揃えて力説するのは、読書を通じて自国の歴史や古典に学ぶことの大切さです。それが日本の未来の余慶に繋がることを私たちは肝に銘じ、若い世代に伝承していかなければなりません。

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