3 月号ピックアップ記事 /二十代をどう生きるか
『漫画が好き』という情熱で走り続けた半世紀 弘兼憲史(漫画家)
ビジネスマンに絶大な人気を誇る漫画「島耕作シリーズ」は連載開始から37年が経ち、累計発行部数は4400万部を超えた。作者である弘兼憲史氏は漫画家として50年近く作品を生み出し続けているが、その出発点は25歳の時の決断だったという。漫画家人生を振り返りながら、二十代を生きる上で大切だという三つの条件を語っていただいた。
これは教えるに教えられない、自分で掴むしかない感覚です。ですから、面倒くさがらずに多くのよい作品に触れることが大切です
弘兼憲史
漫画家
思い返せば、小学四年生の頃、夢中になって読み込んだ手塚治虫さんの漫画を綺麗に模写したことがあります。その総量は100頁を超えていましたが、同級生が外で遊んでいる中、一人部屋に閉じ籠って描くことが全く苦にならなかった時点で、漫画家としての第一の才能を備えていたのだと思います。
この模写によって漫画の基礎であるコマ割りを自然に学ぶことができました。例えば自宅の椅子に座っている時に誰かが訪ねてきたシーン。「はーい」と返事をし、立ち上がって玄関まで歩いて扉を開ける。映画だったらすべて撮りますが、漫画の場合「はーい」と言った絵の次に、ガチャッとドアを開ける場面を描いても内容が通じるわけです。
どこまでは描く必要があって、どこからは省略できるか。この感覚を手塚先生の作品から自然と掴むことができました。
漫画家にとってこのリズムやテンポは非常に大切なポイントです。新人の作品を読んでいると、絵もストーリーもうまいけれど、リズムが悪いために途中で引っかかったり、コマ割りのテンポが悪くて飽きてしまう漫画がよくあります。
これは教えるに教えられない、自分で掴むしかない感覚です。ですから、面倒くさがらずに多くのよい作品に触れることが大切です。
『課長 島耕作(1)』弘兼憲史・著/講談社
『相談役 島耕作(1)』弘兼憲史・著/講談社
プロフィール
弘兼憲史
ひろかね・けんし―1947年山口県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)勤務を経て、74年に『風薫る』で漫画家デビュー。85年『人間交差点』で小学館漫画賞、91年『課長 島耕作』で講談社漫画賞を受賞。『黄昏流星群』では、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第32回日本漫画家協会賞大賞を受賞。2007年紫綬褒章を受章。19年「島耕作シリーズ」で講談社漫画賞特別賞を受賞。中高年の生き方に関する著書多数。
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