我が人生を導いてくれた古今の名作 加賀乙彦(作家) 鈴木秀子(文学博士)

作家で精神科医でもある加賀乙彦氏は91歳のいまも、精力的に執筆活動を続けている。 その人生や活動を支えたものは、幼い頃から親しんできた古今東西の様々な名作だった。加賀氏と同様、戦争を乗り越え文学と信仰に人生の信条を求めてきた文学博士・鈴木秀子さんと共に、文学作品の魅力を語り合っていただいた。

60代で分からなかったことが70代で分かり、70代で分からなかったことが80代、90代で分かるということが実際にあります

加賀乙彦
作家

 これは僕の実感でもあるのですが、歳を重ねてから名文、名詩などを一所懸命に読むのはとても意味のあることだと思っています。それをひと言で表現するのはなかなか難しいのですが、60代で分からなかったことが70代で分かり、70代で分からなかったことが80代、90代で分かるということが実際にありますからね。
 そこにある素晴らしさに開眼すると、その奥にある神様の恵みというものがはっきりと見えてくる。

名作を通して人生の苦悩に向き合っていくと、その力がこちらに向かって押し返してくる。そこにいろいろな気づきや発見がある。
こういう体験は文学でしか得ることはできません

鈴木秀子
文学博士

 名作を通して人生の苦悩に向き合っていくと、その力がこちらに向かって押し返してくる。そこにいろいろな気づきや発見がある。こういう体験は文学でしか得ることはできません。
 文学は人間の中に潜んでいる邪悪なものを洗いざらい私たちに見せてくれます。間違って悪に傾きかねない心を人間誰もが持っている。それをどう乗り越えて人間らしく生きていくかという世界に文学は誘ってくれるんですね。

プロフィール

加賀乙彦

かが・おとひこ――昭和4年東京生まれ。東京大学医学部卒業。フランス留学後、パリ大学サンタンヌ病院、北仏サンヴナン病院に勤務。犯罪心理学・精神医学の権威でもあり、作家としての活動の傍ら東京拘置所医務部技官、上智大学文学部心理学科教授などを歴任。『フランドルの冬』で芸術選奨文部大臣新人賞、『宣告』で日本文学大賞、『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞を受賞したほか入賞多数。近刊に『わたしの芭蕉』(講談社)『ある若き死刑囚の生涯』(ちくまプリマー新書)など。日本藝術院会員。文化功労者。文京区立森?外記念館名誉館長。

鈴木秀子

すずき・ひでこ――東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。聖心女子大学教授を経て、現在国際文学療法学会会長、聖心会会員。日本にエニアグラムを紹介し、各地でワークショップなどを行う。著書に『自分の花を精いっぱい咲かせる生き方』『幸せになるキーワード』(共に致知出版社)『こども聖書』(すばる舎)『死にゆく人にあなたができること』(あさ出版)など多数。


編集後記

トップ対談には作家の加賀乙彦さんと文学博士の鈴木秀子さんにご登場いただきました。お二人にはいくつかの共通体験があります。同じカトリックの信徒であること、また戦争体験の時期や、価値観が逆転した戦後の混乱期を懸命に生きてこられたことなどです。若い頃からご自身の心の支えにしてきた東西の文学作品やその素晴らしさを存分に語り合っていただきました。

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