3 月号ピックアップ記事 /対談
人生をひらく名著の力 安田登(下掛宝生流ワキ方能楽師) 秋満吉彦(NHK「100分de名著」プロデューサー)
古今東西の古典の学びと能楽で培ったメソッドを生かし、作品の創作・演出・出演、寺子屋塾の主宰など幅広い活動を続ける下掛宝生流ワキ方能楽師・安田登氏。NHK Eテレの人気教養番組「100分 de 名著」のプロデューサーとして、数多くの名著・名作を世に広く紹介してきた秋満吉彦氏。共に読書を通じて自らの人生をひらいてきたお二人に、名著の持つ力、読書の素晴らしさを縦横に語り合っていただいた。
特に『致知』の読者に多い年齢が上の方たちが、読書の素晴らしさを若い世代に教えることがとても大事だと思います。
そのためには、読んだ本の学びを自分自身が実践することです
安田 登
下掛宝生流ワキ方能楽師
安田
特に『致知』の読者に多い年齢が上の方たちが、読書の素晴らしさを若い世代に教えることがとても大事だと思います。
そのためには、読んだ本の学びを自分自身が実践することです。例えばビジネス書を読んでも、「いいこと書いてあるな」と表層的なところだけ理解して、すぐに忘れてしまうという人が多い。部下や若い人からも、「あの人、あんないいことを言っているのに、実際は全然違う」と思われてしまったりする。実践が何より大事です。
秋満
確かに僕もフランクルに出逢って、その学びを実践してなければ、いまNHKのプロデューサーとして働いていないわけです。
本の学びを実践する、これからも大事にしていきたいですね。
僕はフランクルの『夜と霧』と出合った時に「これは自分への手紙なんだ」と思って読んだんです。そうした感覚で本に向き合えば、自ずと真剣になって読み方や見え方が変わってくる。
特に若い人には、「自分への手紙が届いているんだ」という感覚で本を読んでほしいと願っています
秋満吉彦
NHK「100分de名著」プロデューサー
秋満
そもそもいまどんな名作でも文庫本なら五百円、ランチ一食分で手に入るんですよ。五百円の学びで人生、仕事が変わっちゃう。
安田
ええ、本当に安いよね。
秋満
コロナ禍で仕事に行き詰まってしまった、上司とどう付き合ってよいのか分からない、人生に挫折した、学校でいじめを受けている……そういう時に、ランチ一回我慢して買った一冊が「ああ、そうか」と思ってもみなかった気づきを与えてくれる。僕の人生って本当にそのオンパレードです。
それで、僕はフランクルの『夜と霧』と出合った時に「これは自分への手紙なんだ」と思って読んだんです。そうした感覚で本に向き合えば、自ずと真剣になって読み方や見え方が変わってくる。特に若い人には、「自分への手紙が届いているんだ」という感覚で本を読んでほしいと願っています。
安田
本を自分への手紙として読む。とても大事な姿勢ですね。
プロフィール
安田 登
やすだ・のぼる――昭和31年千葉県生まれ。高校教師時代に能楽と出合い、ワキ方の重鎮・鏑木岑男師の謡に衝撃を受け27歳で入門。現在は、ワキ方の能楽師として国内外を問わず活躍し、能のメソッドを使った作品の創作、演出、出演などを行う。『身体感覚で「論語」を読みなおす。』(新潮文庫)『NHK100分de名著 平家物語』(NHK出版)『野の古典』(紀伊國屋書店)など著書多数。
秋満吉彦
あきみつ・よしひこ――昭和40年大分県生まれ。熊本大学大学院文学研究科修了後、平成2年NHK入局。ディレクター時代に「B?Sマンガ夜話」「日曜美術館」などを制作。「100分de メディア論」(ギャラクシー賞優秀賞)「100分de 平和論」(放送文化基金賞優秀賞)等をプロデュースした。現在、NHK Eテレの教養番組「100分de 名著」のプロデューサーを担当。著書に『仕事と人生に活かす「名著力」』(生産性出版)『行く先はいつも名著が教えてくれる』(日本実業出版社)などがある。
編集後記
古今東西の古典を深く読み込んでこられた能楽師の安田登さん。NHKの人気教養番組『100分de名著』のプロデューサーとして数多くの名作を世に知らしめてこられた秋満吉彦さん。その二人が実体験を交えて縦横に語り合う読書談義には、名作を読み、その魅力と教えに触れることを通じて人生・仕事をよりよくしていく珠玉のヒントが満載です。
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