12 月号ピックアップ記事 /対談
チームづくりの要諦は人間学にあり 森林貴彦(慶應義塾高等学校野球部監督) 佐藤芳子(金蘭会中学校バレーボール部監督)
『致知』を活用した人間学の勉強会「木鶏会」が教育の場に大きく広がりつつある。今年、夏の甲子園で見事優勝を果たした慶應義塾高等学校野球部と、中学女子バレーボールで史上初の4連覇を成し遂げた金蘭会中学校バレーボール部も、毎月の木鶏会を通じて『致知』を熱心に学んでいる。それぞれのチームを率いて目覚ましい実績を上げてきた森林貴彦氏と佐藤芳子氏に、指導において人間学を重視する理由や、木鶏会に懸ける思いを、ご体験を交えて語り合っていただいた。
厳しい勝負を最後に決めるのは、技術や体力ではなく人間力です。
その人間力を養う上で最も有効な学びの場が、木鶏会だと実感しています
森林貴彦
慶應義塾高等学校野球部監督
〈佐藤〉
夏の甲子園でのご活躍を拝見しておりました。お目にかかれて光栄です。
〈森林〉
光栄だなんて、とんでもありません。こちらこそよろしくお願いします。
〈佐藤〉
きょうはとても緊張しています(笑)。気持ちを落ち着かせたいので、勉強で持ち歩いている致知出版社さんの本や木鶏会で使っているノートを周りに置かせてください。
〈森林〉
『致知』や書籍がスーツケースいっぱいに入っていますね。
〈佐藤〉
こちらは「森林監督ノート」です。お話をテレビで伺ってとても感動しましたので、監督の記事を集めて勉強させていただいています。
〈森林〉
いや、恐縮です。中学の女子バレーボールで大活躍をなさっている佐藤監督にそんなに研究されると、こっちが緊張してしまいます(笑)。
〈佐藤〉
こちらへ伺う前には、慶應義塾高校野球部のホームページに紹介されていた部訓を生徒と一緒に音読してきました。
〈森林〉
そうでしたか。あれは私が指導を受けた上田誠前監督の教えに共感して、部訓にさせてもらったものなんです。
甲子園での初戦を控えた8月4日、宿泊先のホテルで木鶏会を行う慶應義塾高校野球部の選手たち
『人間力の向上』と『強いチームの創造』というチーム理念は『致知』から学んだことをもとにつくりました。
4連覇も、『致知』との出逢いから始まったんです
佐藤芳子
金蘭会中学校バレーボール部監督
〈佐藤〉
私たちがいつも言っているのと同じことがたくさん掲げてあったのでとても嬉しかったんですけど、「理論武装せよ」というのは新鮮でした。他校であまり見られないインテリジェンスが感じられて、さすが慶應さんだなと。
さらに読み進めていくと言葉がどんどん熱くなって、最後のほうでは「自分で自分の逃げ道を作るんじゃねえ」「男は危機に立って初めて真価が問われるものだ」と。こういう無骨なところも併せ持っておられるのがすごく嬉しくて(笑)。
〈森林〉
うちの部員より熱心に読んでいただいてありがとうございます。上田前監督が日頃言っていたことをそのまま文字にしてあるので、結構荒っぽいところもあると思います(笑)。
うちは世間のイメージとは違って、泥臭いところもいっぱいあるんですよ。
〈佐藤〉
そこが素敵なんです。こういう教えが、甲子園でのご活躍にも繋がっているのでしょうね。……(続きは本誌をご覧ください)
今年、中学女子バレーボール史上初の全国大会4連覇を成し遂げ、胴上げされる佐藤監督
プロフィール
森林貴彦
もりばやし・たかひこ――昭和48年東京都生まれ。平成8年慶應義塾大学法学部卒業。大学在学中に慶應義塾高等学校の大学生コーチを務める。卒業後、NTT勤務を経て、指導者を志し筑波大学大学院でコーチングを学ぶ。その後慶應義塾幼稚舎教員をしながら、慶應義塾高等学校野球部コーチ、助監督を経て、27年監督に就任。令和5年全国高校野球選手権大会で107年ぶりの優勝を果たす。著書に『Thinking Baseball ─慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』(東洋館出版社)がある。
佐藤芳子
さとう・よしこ――大阪府生まれ。千里金蘭大学短期大学部を経て、平成17年大阪樟蔭女子大学学芸学部卒業。卒業後にバレーボールの指導を始め、21年金蘭会中学校女子バレーボール部監督に就任。全国大会優勝は通算7回、令和5年には中学女子バレーボール史上初の4連覇を達成した。
編集後記
夏の甲子園で107年ぶりに優勝を果たした慶應義塾高校野球部と、中学女子バレーボール史上初の全国大会4連覇を成し遂げた金蘭会中学校バレーボール部。偉業を実現した両校が共に「学内木鶏会」を導入し、『致知』を熱心に学ばれていることは、弊社にとって幸甚の極みです。監督を務める森林貴彦さんと佐藤芳子さんの対談を通じて、若い世代にさらに人間学の輪が広まることを念じてやみません。
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