12 月号ピックアップ記事 /インタビュー
運命を背負い、最高の人生を模索する 阿部憲史(阿部クリニック院長)
山形市で阿部クリニックを開業している精神科医・阿部憲史氏は、学生時代、ラグビーの試合中に頸椎を骨折し、以来、車椅子生活を続けている。首から下の機能を失うというハンディにも挫けず、医師国家試験に合格。残された見る、聞く、話すという機能を最大限に生かして患者さんに向き合う日々だ。「真っ直ぐに、ひたすらに」をモットーに歩み続ける阿部氏にこれまでの歩みや信条をお聞きした。
落ち込んだ時、ふと考えるんです。
「自分が暗い顔をしていたら、四肢障碍の自分を肯定し結婚してくれた妻は、医学生の息子は、あるいは患者さんはどんな気持ちだろうか」と。
そう気持ちを切り替えると、運命を背負い、その中で最高の人生を模索していこうという強い気持ちが沸いてくるんです
阿部憲史
阿部クリニック院長
──厳しい逆境を乗り越え、精神科医として活動される阿部先生の人生を知り、お話を伺えることを楽しみにしてきました。
〈阿部〉
ありがとうございます。ご覧の通り私は手足が全く動かずに車椅子生活をしている四肢障碍者です。四肢障碍は声が出しにくかったり、何かと体がしんどいんです。質問に対して、どこまで頭の中で整理しながらお話ができるか、少し不安でもあるのですが、精いっぱいお答えさせていただきます。
──まずはクリニックのことについてお話しいただけますか。
〈阿部〉
1996年、37歳の時に精神医療のクリニックを開業して、今年で27年を迎えます。外来の患者さんを一日に50人ほど診察しています。建物内は診察室一つと待合室一つ、あとは駐車場のみの、〝日本一小さなクリニック〟だと思っていますけれども、すぐ近くにある山形大学医学部附属病院の精神科と比較しても、クリニックの雰囲気、患者さんを癒やす力のレベルは下げないよう心がけているんです。
最近、私の生活のお世話をしてくださるヘルパーさんと「阿部クリニックの特徴は何だろう」という話をしました。手足が動かなくて、カルテや処方箋も看護師に書いてもらって、パソコンも打てない。そんな院長のいるクリニックはどんな存在だろうかと。
もちろん、私個人としては患者さんの病気を治し社会に復帰させること、自信を持って自分らしい人生を歩んでいただきたいと願っていますが、診察で私にできることは見ること、聞くこと、話すこと。その機能を精いっぱい使って、患者さんをじっと見ているんです。
……(続きは本誌をご覧ください)
プロフィール
阿部憲史
あべ・けんし――昭和34年山形県生まれ。57年東北大学工学部卒業。平成3年山形大学医学部卒業。医学部生だった昭和59年、ラグビー試合中の事故で頸椎を脱臼骨折、四肢マヒとなり、車椅子生活となる。山形大学医学部附属病院で研修医として勤務後、同大学医学部精神神経科に入局。平成8年阿部クリニック開院、現在に至る。
編集後記
学生時代、ラグビーの試合中の事故で首から下の機能を失った山形市の阿部クリニック院長・阿部憲史さん。〝日本一小さいクリニック〟で、自分に残された見る、聞く、話すという機能を最大限に生かし、日本一真剣に患者さんと向き合う姿勢が大変印象的でした。
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