海軍兵学校歴代校長に学ぶリーダーの条件 真殿知彦(海将・海上幕僚副長)

2022年12月に日本の海の防衛を担う重職である海上幕僚副長に就任し、2023年7月には初の著書となる『海軍兵学校長の言葉』を上梓した海将の真殿知彦氏。明治から昭和に至る激動の時代に、近代的な海軍建設とその人材育成に心血を注いだ海軍兵学校の歴代校長の言葉や生き方には、いまの私たちが学ぶべき点が多くあると言う真殿氏に、自身の体験や同書を紐解きながら、深刻な内憂外患に直面する日本に求められるリーダーの条件を語っていただいた。

まず誰よりもリーダー自身が己を厳しく律して努力し続ける、その姿勢が信頼と人望を生み、強い組織や人材を実現する土台となっていくのだと思います。

私も「敬、怠に勝てば吉なり」の言葉を胸に刻み、日本の領土、領海、領空を守り抜くため、日々の与えられた任務に全力を尽くしていく覚悟です

真殿知彦
海将・海上幕僚副長

─真殿海将は昨年12月、日本防衛の重職である海上幕僚副長に就任されました。まず、いまどのような思いで日々の任務に向き合っているかお聞かせください。

〈真殿〉 
日本を取り巻く安全保障環境が年々非常に厳しくなっている中、大変重要な役職を拝命し、本当に身の引き締まる思いです。

海上幕僚監部は、海上自衛隊の防衛力整備や教育、装備に関する計画立案、人事施策などを行うのが主な任務です。私自身に関しては、上司である海上幕僚長を副長としてしっかり補佐をすると共に、各部署の幹部をしっかり指導するというのが主な仕事になります。そのために海上自衛隊のすべての任務、業務を統括するべく日々研鑽しているところです。

─日本の安全保障環境は、具体的にどれほど厳しいのですか。

〈真殿〉 
最近、新しい『防衛白書』が出ましたけれども、北朝鮮については、いままで以上に一層重大かつ差し迫った脅威であると、防衛省が公式文書の中で唯一「脅威」という言葉を使っています。事実、北朝鮮は昨年からかなりの数の弾道ミサイルを発射しています。

それから中国の軍事活動についても、我が国だけではなく国際社会にとっても深刻な懸念事項となっており、世界に対するこれまでにない最大の戦略的挑戦であると考えています。1980年代、中国の艦隊はフリゲートクラスの小さい艦しかありませんでしたが、それが20年、30年で二桁の経済成長を続け、軍事にもかなりの投資をし、3、40年前には全く想像できないような巨大な軍隊になった、というのが現実です。
……(続きは本誌をご覧ください)

プロフィール

真殿知彦

まどの・ともひこ――昭和41年千葉県生まれ。平成元年防衛大学校を卒業後、海上自衛隊入隊。第2飛行隊長、第1航空隊司令、海上幕僚監部防衛課長、第2航空群司令などを経て、28年海上自衛隊幹部候補生学校長。29年統合幕僚監部防衛計画部副部長、30年横須賀地方総監部幕僚長。令和2年海上自衛隊幹部学校長。4年より海上幕僚副長に就任。著書に『海軍兵学校長の言葉』(三和書籍)。


編集後記

海上自衛隊幹部候補生学校と海上自衛隊幹部学校の校長を歴任し、昨年末に日本の海の安全を守る海上幕僚副長の要職に就任した真殿知彦さん。自身の実体験や歴代海軍兵学校長の言葉を基に語られるリーダー論は、まさに内憂外患に直面する日本に必要な教訓に溢れています。

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