12 月号ピックアップ記事 /インタビュー
後世に伝えたい 稲盛さんの創業者魂 永守重信(日本電産会長)
共に京都の地で会社を興し、一代で日本を代表する1兆円企業へと導いてきた二人の経営者がいる。稲盛和夫氏と永守重信氏。同じ申年生まれで年齢はひと回りの差があり、永守氏は常に稲盛氏の背中を追いかけ、目標として仕事に邁進してきたという。稲盛氏が亡くなられたいま、永守氏は何を思い、これからどう歩んでいこうとしているのか。約40年に及ぶ稲盛氏との付き合いの中で受けてきた影響を交えつつ、胸の内を明かした。
恩返しというのは、恩師の企業以上になることだと思っているんです。
京セラやKDDIを超える会社を築くことが稲盛さんへの恩返しと捉え、いまも毎日、仕事に邁進しています
永守重信
日本電産会長
――先般、稲盛和夫さんが90歳で亡くなられました。訃報に接した時の思いをお聞かせください。
〈永守〉
私はあの方の背中を見ながらずっと経営をしてきて、絶えず後ろから「追いつき、追い越せ」という考えでいましたから、ものすごく大きな失望感でした。
100歳くらいまでは生きられるんじゃないかと思っていましたので、稲盛さんが亡くなることは想定していなかったです。
突然、指針となる存在を失って、困ったな、なんでこんなに早く去ってしまわれるんだという思いでしたね。
――長い間、目標としてこられた方が亡くなって、どのような決意を抱かれていますか。
〈永守〉
いま私は、「稲盛さんは65歳の時に京セラの会長を退任したじゃないか。あなたはいつまでやるの」と違った意味で稲盛さんと比較され、潔さがないとか散々記事に書かれています(笑)。
だけど、私には10兆円企業をつくるという、稲盛さんとは異なる目標があるんですよ。ですから、稲盛さんは65歳で辞めたんだからあなたも早く辞めろという考え方には一切与しません。
私は恩返しというのは、恩師ができなかったことをやる、経営の場合、恩師の企業以上になることだと思っているんです。
だから、そう簡単ではありませんが、「出来るまでやる」の精神で京セラやKDDIを超える会社を築くことが稲盛さんへの恩返しと捉え、いまも毎日、仕事に邁進しています。
プロフィール
永守重信
ながもり・しげのぶ――昭和19年京都府生まれ。42年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科を首席で卒業。48年日本電産を設立、社長に就任。国内外で積極的なM&A戦略を展開し、世界No.1の総合モーターメーカーに育て上げた。現在、会長兼最高経営責任者(CEO)。平成30年京都先端科学大学を運営する学校法人永守学園理事長に就任。著書に『成しとげる力』(サンマーク出版)『永守流経営とお金の原則』(日経BP)『人生をひらく』(PHP研究所)『大学で何を学ぶか』(小学館)など。
編集後記
日本電産会長の永守重信さんは現在、多忙で取材は断っているものの、稲盛さんに関する取材だけは受けるとのことで時間を捻出してくださいました。創業経営者としての迸る情熱や気魄と共に、時に垣間見える少年のような眼差しから、稲盛さんへの深い敬慕の念が伝わってきます。
特集
ピックアップ記事
-
対談
稲盛さんに学んだリーダーの条件
伊藤謙介(京セラ元社長)
小野寺 正(KDDI元社長)
-
特別講話
人は何のために生きるのか
稲盛和夫(京セラ名誉会長)
-
インタビュー
後世に伝えたい 稲盛さんの創業者魂
永守重信(日本電産会長)
-
対談
稲盛さんに教わった人生で大切なこと
岡田武史(FC今治オーナー)
栗山英樹(侍ジャパントップチーム監督)
-
我が心の稲盛和夫
ど真剣の情熱で可能性を信じ抜く
柳井 正(ファーストリテイリング会長兼社長)
-
我が心の稲盛和夫
「利他」の灯をかかげて
五木寛之(作家)
-
我が心の稲盛和夫
将来を熱く語り合った在りし日を偲んで
村田純一(村田機械会長)
-
我が心の稲盛和夫
動機善なりや 私心なかりしか
門川大作(京都市長)
-
我が心の稲盛和夫
常に明るく前向きに──
清水新一郎(日本航空副社長)
-
我が心の稲盛和夫
人として正しい道を貫け
伊藤雅章(京都サンガF.C.社長)
-
我が心の稲盛和夫
命に代えても果たしたい〝約束〞
武隈 晃(国立大学法人鹿児島大学 稲盛アカデミー長)
-
我が心の稲盛和夫
確固たる人間観、死生観を持つ
大田嘉仁(日本航空元会長補佐専務執行役員)
-
我が心の稲盛和夫
人類が共有できる稲盛哲学の力
曹 岫雲(稲盛和夫〈北京〉管理顧問有限公司董事長)
-
アーカイブ
利他の心こそ繁栄への道
稲盛和夫(京セラ名誉会長)
-
座談会
我ら、かく稲盛フィロソフィを学び、経営を発展させてきた
十河孝男(徳武産業会長)
小池由久(日本経営ホールディングス名誉会長)
濵田総一郎(良知経営社長)
京谷忠幸(ピーエムティー社長)
好評連載
ピックアップ連載
バックナンバーについて
バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます
過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。
定期購読のお申込み
『致知』は書店ではお求めになれません。
電話でのお申込み
03-3796-2111 (代表)
受付時間 : 9:00~17:30(平日)
お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード