12 月号ピックアップ記事 /特別講話
人は何のために生きるのか 稲盛和夫(京セラ名誉会長)

盛和塾生のみならず、一般の方々にもよりよい人生を歩んでいただきたい――。
そんな稲盛氏の想いにより実現した盛和塾主催の市民フォーラムは、2002年から2016年にかけて、日本・海外の各地で累計10万人もの人々を動員した。
2013年10月29日、大阪国際会議場で開催された講演会には2500名を超える参加者が集い、ホールに入りきらない人々が別室モニターから聴講するほどの熱気に溢れたという。
人が自ら運命を創り、素晴らしい人生を生きるためのヒントに満ちた珠玉の講話をここに収録する。

どのような災難に遭おうとも、幸運に恵まれようとも、それは試練として神が私に与えてくれたものだと感謝の心で受け止め、前向きに、ひたすら明るく努力を続けていく生き方をしていこう
稲盛和夫
京セラ名誉会長
自然というものは、我々が運命に従って人生を生きていく中で試練というものを与えます。
私の言う試練とは、ある時には降りかかってくる災難であり、またある時には降りかかってくるラッキーな幸運のことでもあります。
私は、幸運に恵まれることも試練なのだと思っております。幸運に恵まれ、ラッキーな人生を歩み始めれば、とかく人間というものは謙虚さを忘れ、傲慢になってしまいます。
贅沢をするようになったり、人を軽蔑するようになったり、人間が変わっていきます。やがてその人は、謙虚さを忘れ、傲慢になっていったがために、せっかく得られた幸運から見放され、没落をし、転落をしていく。
そういう人がいることを思えば、幸運というものも神が与えた試練の一つなのです。災難だけが試練ではないのです。
幸不幸いずれの試練に出遭った時も、どのように対応するのかによって、その後の人生が変わっていくと思っていた私は、「災難に遭おうとも、幸運に恵まれようとも、どんな試練であろうとも、それを感謝の心で受け入れていこう」と考えてまいりました。
とかく人というものは、災難に出遭えば、「なぜ私だけがこんな目に遭うのか」と思ってしまい、世間を恨んだり、人を妬んだり、挙げ句の果ては嘆き悲しみ、自分自身を腐らせてしまう。
毎日のように不平不満、愚痴を並べ立て、自分の人生をますます暗いものにしてしまうのが普通であります。しかし私は、決してそうなってはならないと考えました。
「どのような災難に遭おうとも、それは試練として神が私に与えてくれたものだと受け止め、前向きに、ひたすら明るく努力を続けていく生き方をしていこう」
私はそのように思い、そういう人生を生きてきたつもりです。
プロフィール
稲盛和夫
いなもり・かずお―昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰する。中小企業経営者のための勉強会「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ(令和元年解散)。令和4年8月24日、90歳で逝去。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』『稲盛和夫一日一言』(いずれも致知出版社)など多数。
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