2 月号ピックアップ記事 /各界の識者に聞く
日本語なくして日本人なし 齋藤 孝(明治大学文学部教授)
多様性と逆行する英語の圧力、隣国で繰り広げられる少数民族への言論圧殺、古文・漢文の衰退……。この現状を憂い、「日本語は岐路に立たされている」と警鐘を鳴らす齋藤孝氏。日本語教育の第一人者である氏に、現在の日本語が置かれた危機的状況と共に、日本語を守り活路を見出す術を伺った。
私は「No Japanese,no Japanese」という言葉を標語のように唱えています。
翻訳すると、「日本語なくして日本人なし」となります。
言語と民族は不可分の関係にあるのです
齋藤 孝
明治大学文学部教授
日本人として生を享け、日本語と共に生きてきた私は、日本語こそが日本の最大の財産だと思っています。もし日本列島に住む人々が一人も日本語を話さなくなったとしたら、日本人は存在すると言えるのかと問われれば、存在し得ないというのが私の考えです。
なぜなら、日本人は日本語を母語として育つ中で、日本人的な思考や感性を身につけてきたからです。私たちが個人的な考えや感情と勘違いしているものの多くは、脈々と継承されてきた精神に他なりません。
つまり、先人の努力によって形を変えながら受け継がれてきた文化が日本語であり、私たちはこれを次世代に伝えていく責務を担っているということです。
その意味で日本語がなくなった場合、従来有してきた日本文化や伝統の維持は困難を極めます。日本人のアイデンティティーが失われていった時には、もはや日本人は存在しないも同然でしょう。
大半の日本人は、日本語は水や空気のように存在し、当たり前に享受できるものだと捉えているのではないでしょうか。しかし世界を見ると、少数言語は常に存続の危機に直面しており、消滅してしまった例も少なくありません。
そしていま私は、日本語は意識的に守らなければ継承できない、継承の努力を怠ればいつか消滅しかねないと危惧しています。その理由は主に3つ挙げられます。
1つ目は、人口減です。現在、
……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇日本語は意識的に守らなければ継承できない
◇素読はすべての学習を支える言語的な基盤を養う
◇互いの言語を認め合うことが多様性のあるべき姿
プロフィール
齋藤 孝
さいとう・たかし――昭和35年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。著書に『国語の力がグングン伸びる1分間速音読ドリル』『齋藤孝の小学国語教科書全学年・決定版』『齋藤孝のこくご教科書小学1年生』(いずれも致知出版社)など多数。
編集後記
日本語は意識的に守らなければ消滅してしまうかもしれない、と危機感を募らせる齋藤孝氏。では、どうすれば日本語を守ることができるのか――。実例を豊富に交えた語りから、微かに差し込む希望の光を感じずにはいられませんでした。
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