2 月号ピックアップ記事 /生涯現役
縁を生かす 酒井董美(島根大学法文学部元教授)

60年以上にわたって主に山陰地方の民話やわらべ歌を収集・研究してきた酒井董美氏。90歳のいまもオンライン講座で全国の方々に民話の素晴らしさを伝承し続けている酒井氏の歩みには、健康長寿の秘訣、出会いを生かし人生をひらく要諦が詰まっている。
〈写真提供=朝日新聞社〉

日本の庶民が先祖代々口承してきた民話はまさに「無形民俗文化財」であり、「こうあってほしい」という先人たちの願いの結晶である
酒井董美
島根大学法文学部元教授
──60年以上にわたり、山陰地方の民話やわらべ歌を収集・研究してこられた酒井さんは、90歳を迎えるいまなお、オンラインツールを自在に駆使してその魅力を発信なさっているそうですね。
〈酒井〉
Zoom(ズーム)を使ったオンライン講座は、自宅の一室をミニ放送局にして、いまは毎週月曜日の夜8時からの「雑談会」、この9月に始まった「第6回 山陰の民話、わらべ歌ミニオンライン講座」を開催しています。
特に「ミニオンライン講座」には東京、千葉、埼玉、奈良、福井、兵庫、広島、島根、山口、大阪、福岡など全国から約30名が参加してくださっていて、年齢も40代から70代まで様々です。仕事で都合が悪い人のために、朝と夜の2部制にしていますが、両方受講される方もいます。講義は同じでも質疑応答は変わってきますから、そこが面白いようですね。
あと、やむなく欠席された方には、後から必ず録画をお送りしています。講座は事前振り込みで1回の受講が100円ですけれども、やっぱり、お金をいただいている以上は、欠席者にもその分をお返しするのが当然だと思うんです。
──皆さんは、民話のどこに魅力を感じて受講されるのですか。
〈酒井〉
民話は同じ系統の話であっても、地域によって様々なバージョンがあるんですよ。例えば、有名な「桃太郎」は、誰もが鬼に立ち向かう勇ましい姿を想像するかと思いますが、ある地域では、鬼ヶ島に向かうまで全く怠け者の桃太郎が登場します。そうした民話が持つ地方色に魅力を感じてくださっているのかもしれません。
──こうしてオンラインでお話ししていても全く年齢を感じませんが、健康長寿のために、特に意識していることはございますか。
……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
◇健康の秘訣は仕事をすること
◇「教師は赴任した地域に溶け込むべきである」
◇縁が人生を導いてくれた
プロフィール
酒井董美
さかい・ただよし――昭和10年京都府生まれ。島根大学教育学部卒。32年より中学校・高等学校に教員として勤務しながら、山陰地方の民話やわらべ歌の収集を始める。島根大学教授、鳥取短期大学教授などを歴任。現在はオンラインツールを活用した民話・わらべ歌に関するオンライン講座を開催している。著書に『島根の民話』『QRコードで聴く 島根の民謡・労作歌』『QRコードで聴く 島根のわらべ歌』(いずれも今井出版)など多数。
編集後記
こんな方がいるのか――。島根県松江市に暮らしながら、90歳を超えて未だに地域の民話収集に足繁く出かける酒井さんへの第一印象です。その声のはつらつさは、いわゆる〝老人〟らしさが全く感じられず、生涯青春とでも言うべき心境で活動を続けておられることが感じ取れました。いままさに失われている民話やわらべ歌の豊穣な世界。記事を通じて、一道を行くことで味わえる世界の奥深さと共に、私たちが普段意識しない民間伝承、口承文芸の重みに思いを馳せていただければ幸いです。

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