6 月号ピックアップ記事 /対談
己を磨いた分だけ人を育てることができる 井村雅代(井村アーティスティックスイミングクラブ代表理事) 岡田武史(今治.夢スポーツ会長)

東洋古典『大学』は人の上に立つ者の心得として「己を修め、人を治める」を説く。人は己を修めた分だけ、人を感化し育てることができる、ということだろう。ここにスポーツの世界において、それぞれ長年にわたり数々の選手やチームを育成してきた名指導者がいる。井村雅代さんと岡田武史さん。共通点が多く、互いに尊敬するお二人が軽妙かつ本音で語り合った「リーダーのあり方」「チームづくりの要諦」。

当たり前のレベルを上げることが人間を磨くことに繋がっていく
井村雅代
井村アーティスティックスイミングクラブ代表理事
〈井村〉
早朝から大阪まで来ていただき、ありがとうございます。
〈岡田〉
この後、ある大学の入学式で岡山に行くんですよ。
〈井村〉
岡田さんも走り回っておられるんですね。
〈岡田〉
貧乏人、暇なしですわ(笑)。
〈井村〉
私も先週は自分のクラブの合宿が草津であって、金メダリストの乾(友紀子)をコーチとして育てていまして、5月の日本選手権が終わった翌々日にドイツへ行くんですよ。いまドイツの選手も教えているので。
〈岡田〉
いい選手がいるんですか?
〈井村〉
いなくたって、いい選手に育てんねん(笑)。ドイツはパリ五輪の出場権を獲得できなかったんですけど、一人の若い選手が何としても五輪に出たいと言うので、コーチに就きました。
その選手は私が教えたことをすべて吸収し、昨年、世界でソロのグランドチャンピオンになったんです。今年はもう一人の選手に力を入れて指導していて、デュエットで来年の世界選手権を目指しています。

人間を磨くとはエゴを削ぎ落としていくことだと思います
岡田武史
今治.夢スポーツ会長
〈井村〉
私は24歳からずっとアーティスティックスイミングのコーチをしてきて、もう53年目です。どうしましょう(笑)。
〈岡田〉
いや、本当にすごいことですよ。僕にとって井村さんは最も尊敬する指導者の先輩です。常に結果を残されているじゃないですか。鬼コーチという評判は聞いていましたが、厳しいだけでは絶対に人はついてこない。だからきっと深い懐を持っておられるんだろうなと思って、もう20年以上前ですかね、初めてお会いした時に「ああ、やっぱりそうだ」と感じたことを覚えています。
人間って誰でも「いい人」だと言われたいし、好かれたいじゃないですか。僕はもちろんのこと、井村さんもきっとそうだと思うんですけど、勝負事に関してそこを断ち切れるか。僕は最初それができなかった。でも、井村さんはずっとやってこられている。こういう指導者はあまりいません。
〈井村〉
私も岡田さんのことを尊敬していますよ。弱いところからチームを指導してきて、世界の舞台で戦えるレベルに高めてきたのはすごく格好いいなと。
〈岡田〉
さっきドイツの話が出ましたけど、僕は古河電工でコーチをしていた35歳の時に、ドイツ留学したことが一つの転機でした。それまでは……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全10ページ(約14,000字)~
◇勝負事に関して小善を断ち切れるか
◇本気で向き合えばどんな子にも通じる
◇相手に気づきを促す3つの叱るコツ
◇目に見えない余韻やオーラを残す
◇信頼関係を築く選手との関わり方
◇私心やエゴは全部見抜かれる
◇両者が『致知』を読み続ける理由
◇最後は素の自分で戦うしかない
◇最悪の状況下で選手に開口一番伝えたこと
◇遺伝子のスイッチがオンになった瞬間
◇結果を出せるのは結果を決めているから
◇勝利の神様は細部に宿る
プロフィール
井村雅代
いむら・まさよ――昭和25年大阪府生まれ。中学時代よりアーティスティックスイミングを始める。選手時代は日本選手権で2度優勝し、ミュンヘン五輪の公開演技に出場。天理大学卒業後、大阪市内で教諭を務める傍ら、アーティスティックスイミングの指導にも従事。53年日本代表コーチに就任。平成18年より中国、イギリスの指導を経て、26年日本代表ヘッドコーチに復帰。28年リオ五輪ではデュエット、団体共に銅メダルを獲得。令和3年の東京五輪では4位入賞。五輪でのメダル獲得数は通算16個。著書に『井村雅代コーチの結果を出す力』(PHP研究所)など。
岡田武史
おかだ・たけし――昭和31年大阪府生まれ。55年早稲田大学政治経済学部を卒業後、古河電気工業サッカー部に入団し、日本代表に選出。引退後は日本代表監督として平成9年W杯フランス大会で日本初の本選出場、22年W杯南アフリカ大会でベスト16。他にコンサドーレ札幌、横浜F・マリノス、中国スーパーリーグの杭州緑城で監督を歴任。26年FC今治のオーナーとなり、今治.夢スポーツ会長に就任。令和6年よりFC今治高校里山校の学園長を兼務。著書に『岡田メソッド』(英治出版)など。
編集後記
大阪市立住吉中学校の教師と生徒――何とこれがスポーツ界の名伯楽として知られる井村雅代さんと岡田武史さんのご縁の始まりでした。共通点はそれだけに留まりません。まず大阪出身。誕生月が8月。各々の競技を始めたのは中学生の時。日本代表を指揮したこと。中国やドイツでの指導歴。そして『致知』を長年にわたり愛読し、人間力をベースに人を育ててきた点です。そんなお二人が豊富な経験や実績をもとに培ってきた指導哲学と流儀は必読です。

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