芸術の一道を無心に歩む 濱野年宏(芸術家) 福田正秀(歴史研究家)

香川県高松市を拠点に東洋美と西洋美を融合した独創的な芸術作品を制作・発信し、国内外で高い評価を受けている濱野年宏氏(写真右)。宮本武蔵の研究家として、その知られざる実像を明らかにしてきた福田正秀氏(写真左)。偉人・武蔵を媒介に親交を深めてきたお二人に、それぞれの歩み、宮本武蔵の教えを交えて、一道を究め、よりよい人生を掴む要諦を語り合っていただく。

よりよく生きるために大切なのは、絶えざる研鑽と基礎を積み重ねていくことであり、先人たちの生き方をよく学び、教養を高め続けていくことです

濱野年宏
芸術家

<福田> 
先生は来年90歳を迎えられますが、最近力を入れて取り組んでいる作品はございますか。

<濱野> 
私は美大生の頃は具象画を描いていましたが、美大を卒業する頃から精神的な抽象画といいますか、少しの形と抽象表現が相互に融合する中に、光のようなものが感じられる作風に変わっていきました。その後もずっと探求を続け、特に近年は抽象・具象の両方から生まれる「日本美とは何か」という作風を創作しています。

若い頃は西洋美術の影響を受けていましたが、それと日本美術を対比しながら創作活動を続けていく中で、最終的に日本美に落ち着いていったという感じです。

<福田> 
様々な芸術に触れ、最後は日本の美に回帰していかれた。

一つの道を深く学べばすべての道に通じる。これは私たちがよりよい人生を実現していくためにとても大事なことだと思います

福田正秀
歴史研究家

<濱野> 
それで90歳を迎える2027年は、アメリカのワシントン D. C.にて、「絶対空」の世界を表現した新作を中心に、大回顧展を開催する予定です。「絶対」というのは、西洋のキリスト教の神ですね。「空」というのは、東洋でいう無です。この一見相反する「絶対」と「空」の概念、いわば西洋と東洋の精神を併せ持った作品が「絶対空」だと言えるでしょう。

日本文化は、世界的にならなくてはいけないと私は考えているのです。そのためには、西洋と東洋が別々にあるのではなくて、両方を含む一つの世界が、世界として開かれなくてはいけません。これをやり遂げるには、従来よりも一層深い洞察と発見が必要です。

誰も開いたことのない道なき道を歩んでいるような心持ちですが、もう大方の作品はできましたから、90歳を前に何としてもやり遂げたいと思っているところです。

<福田> 
濱野先生のバイタリティーには圧倒されるばかりですが、「絶対空」と聞くと、宮本武蔵が到達した境地である「万理一空」の言葉を思い浮かべます。とにかく新作の完成が待ち遠しいですね。……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全10ページ~
◇15年の歳月をかけた大作『聖徳太子絵伝四季図大屏風』
◇西洋と東洋の融合 日本文化を世界へ
◇渾身の一冊『武蔵に尋ねよ』
◇芸術家の道を志した原点
◇温もりに溢れた武蔵の芸術に魅せられて
◇自ら信じる道を真っすぐ追究する
◇芸術家としての転機『風神雷神屏風』
◇神仏を敬う心が人生を支える力になる
◇武蔵の転機となった「巌流島の決闘」の真実
◇大文化人宮本武蔵の実像
◇二人の芸術家に通底する慈しみの美、平和への祈り
◇武蔵が教える人生に勝利する極意
◇世のため人のために努力精進し続ける

本記事では世界的な芸術家である濱野さんと宮本武蔵研究の新たな地平を切り開いてきた福田さんに、自らを鍛え世界的な仕事を実現する心構えと実践の要諦を、宮本武蔵の教えを紐解きながら語り合っていただきます。ぜひご覧ください。

プロフィール

濱野年宏

はまの・としひろ――昭和12年香川県高松市生まれ。多摩美術大学卒。高松を拠点に新たな東洋・西洋美の融合と調和を推進し、世界を舞台に独創的な作品を探求・発表。56年21国際交流芸術学院創設。代表作に『風神雷神屏風』(1985年)、大聖年祭記念作品『ユニティ』(2000年)、『聖徳太子絵伝四季図大屏風』(2005年)など。令和5年パリ・ユネスコ本部所蔵の『茶室・桂離宮』の作品群が世界芸術作品遺産に認定、専用展示室が完成。ポーランド共和国文化功労賞・文化勲章、香川県文化功労者表彰、文化庁長官表彰、フランス文化勲章オフィシエ、外務大臣表彰、旭日雙光章など受賞(章)多数。

福田正秀

ふくだ・まさひで――昭和23年長崎県生まれ。放送大学大学院文化科学研究科修士課程修了。宮本武蔵・加藤清正など歴史人物を研究。日本歴史学会会員。(公財)島田美術館評議員。(一財)熊本城顕彰会理事。熊本県文化懇話会世話人(郷土史)熊本県文化協会理事。著書に『加藤清正「妻子」の研究(水野勝之と共著)』『加藤清正と忠廣-肥後加藤家改易の研究』(共にブイツーソリューション)『宮本武蔵研究論文集』(歴研)『宮本武蔵研究第2集-武州傳来記』『宮本武蔵 熊本で生きる』(共にブイツーソリューション)『武蔵に尋ねよ-剣豪宮本武蔵が極めた兵法、芸術、人生哲学』(クレヴィス/写真=藤森武)など。



編集後記

香川県高松の地で独自の芸術を追求し国際的に高い評価を受ける芸術家の濱野年宏さんと、歴史研究家の福田正秀さんは、共に心の師として仰ぐ宮本武蔵を縁に交流を深めてきました。お二人の対談は、高松にある濱野さんのアトリエで行われ、話題は芸術から宗教、歴史、そして修養論、人生論にまで至りました。宮本武蔵の如く「千鍛万錬」で己を日々鍛え、一道を切り拓く要訣が詰まっています。

2026年5月1日 発行/ 6 月号

特集 人間を磨く

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