経営の道は果てなし 横川 竟(高倉町珈琲会長/すかいらーく創業者) 神田 正(ハイデイ日高会長/日高屋創業者)

日本初のファミリーレストラン「すかいらーく」を兄弟4人で開業し、かつて業界の底辺と目されていた外食を産業にまで発展させた横川竟氏。徒手空拳で立ち上げたラーメン屋を、熱烈中華食堂「日高屋」として首都圏を中心に約470店舗展開する一大中華料理チェーンに育て上げた神田正氏。共に八十の坂を上りながらも、経営の第一線を走り続ける道友が語り合う、あらゆる試練を越えてきた挑戦の軌跡、人生と経営を繁栄させる要諦とは――。

商品は発想を変えるだけで価値が生まれる。つまり大事なのは、自分の価値観にこだわらないことなんです。
飲食の場合は産地に赴き、自ら調理し、食べてみる。こうして絶えず価値観を磨いていくことが、欠かせないのでしょうね

横川 竟
高倉町珈琲会長/すかいらーく創業者

〈神田〉 
横川さんは大先輩でいつも教わってばかりですから、対談なんておこがましいですよ(笑)。

〈横川〉 
いやいや、とんでもない。神田さんと初めてお会いしたのは、30年ほど前でしたよね?

〈神田〉 
ええ。紹介を受けて一緒にゴルフをやったのが最初でした。

〈横川〉 
ゴルフのうまい飲食店経営者がいると聞いて、楽しくゴルフをした思い出があります。

〈神田〉 
それからお会いする機会もありましたけど、上場を見据えて社外役員を探していた約20年前、横川さんの下で働いていた方と巡り合ったことを機に、一層懇意にしていただくようになりました。

〈横川〉 
確か同時期、閉店が決まったすかいらーくの駅前物件をいくつかお譲りしたんですよね。

〈神田〉 
そうでした。あの時は本当にお世話になりました。

もう一つ、私の友人が横川さんの親戚なんですよね。そういうご縁もあって、いまも年に1、2回は国立の事務所に伺い、相談や情報交換をさせてもらっています。

私の場合は貧しい家に生まれたことが人間形成の根幹になりました。幼い頃に飢えを味わって、お袋が必死に働く姿を目に焼きつけていたおかげで、汗を流すことが全く苦ではなくなった。
だから、貧乏や困難は財産なんです

神田 正
ハイデイ日高会長/日高屋創業者

〈神田〉
かつての飲食店はイメージの悪い職業とされていました。それをすかいらーくが上場を果たし、産業にまで発展させてくれた。横川さんはまさに先駆者であり、革命家です。特に勉強になったのは、兄弟の子供は会社に入れないことですね。

〈横川〉 
僕らは4兄弟で創業する時にいくつかルールを設けました。奥さんは働かせない、子供は会社に入れない、給料は四等分。守れない場合は出資したお金を放棄し、会社を去る。このルールが空中分解しなかった最大の理由です。

〈神田〉
私も弟と義弟の3で創業期から走ってきましたけど、子供は誰も入っていません。

それから、初めて事務所を訪ねてランチをご馳走になった時、横川さんは私にこう言ったんです。「俺はいつも1,000円ぐらいの食事をするんだ」と。お金なんていくらでもあるだろうに、「ああ、すごい人だ」と思いましたね。

〈横川〉 
格好つけたことを言ったかもしれません(笑)。ただ、自分がやっている商売の中心価格で生活することは心掛けてきました。成功したからといって、いつも高級店に行っていると感覚が狂い、商売の勘所を見誤ってしまう。ですから、日頃からスーパーに通って旬の食材や消費者の動きを観察したり、1食1,000円ほどの飲食店で食事をしたりしています。

神田さんのお店にも時々勉強のために伺います。お客様はいい加減な商売をやっていたら来てくれません。ましてや外食産業で成功するのは1,000店に1店ほどですから、神田さんは非常に真面目に、コツコツといい仕事をされてきたんだと思いますよ。

〈神田〉 
ありがとうございます。横川さんにそう言っていただけて、これ以上名誉なことはありません。……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全10ページ(約14,000字)~
◇「俺はいつも1,000円ぐらいの食事をするんだ」
◇人間形成の根幹になった貧しい幼少期の経験
◇「おまえの人生なんだから、好きな仕事をしたほうがいい」
◇商売の基本を教わった築地での修業時代
◇失敗は神様からのエール
◇日本一の秘訣は人がやらないことをやる
◇夢は見るものではなく語るもの
◇かくしてジョナサンの再建を成し遂げた
◇熱烈中華食堂「日高屋」誕生秘話
◇理想を追い求めて 75歳からの再出発
◇無私の心で世のため、人のために働けるか

プロフィール

横川 竟

よこかわ・きわむ――昭和12年長野県生まれ。中学校卒業後、築地の卸問屋などで修業を積み、37年兄弟4人でことぶき食品を設立。45年「すかいらーく」1号店となる国立店を出店。取締役、子会社ジョナス(後にジョナサン)社長、会長を経て、平成18年すかいらーく会長兼最高経営責任者に就任。20年に退任後、25年高倉町珈琲1号店を東京八王子に出店。26年独立会社として高倉町珈琲を設立、会長に就任。

神田 正

かんだ・ただし――昭和16年埼玉県生まれ。中学校卒業後、15回以上の転職を重ねた末、ラーメン業界に足を踏み入れる。48年「来々軒(現・来来軒)」開店。53年日高商事(現・ハイデイ日高)を設立。平成14年「日高屋」開店。18年東証一部(現・プライム)上場。21年より現職。著書に『日高屋 10人中6人に美味しいといわれたい』(日本実業出版社)『熱烈中華食堂日高屋:ラーメンが教えてくれた人生』(開発社)。



編集後記

すかいらーく創業者の横川竟さんと日高屋創業者の神田正さんの対談は、4月7日に都内ホテルで行われました。お二方は同世代で外食産業の雄。30年以上の親交がありますが、これほど踏み込んで濃密な経営談義に花を咲かせたのは初めてのこと。幾多の艱難辛苦を乗り越え、自己と組織を磨き高めてきた足跡を通して、一人ひとりの人生もまた経営であり、繁栄へと導くヒントを教えられます。

2026年5月1日 発行/ 6 月号

特集 人間を磨く

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