2 月号ピックアップ記事 /各界の識者に聞く
国土強靱化で日本は再び輝く 藤井 聡 (京都大学大学院教授)
長期にわたり低迷を続ける日本。しかしその先には、さらに大きな危機が待ち受けているという藤井聡氏。再生を阻むもの、そして危機を打開する道とは──。
【写真=能登半島地震で倒壊した石川県輪島市のビル 🄫時事】
先述した巨大災害が発生するのが明日なのか、30年後なのか、それは誰にも分かりません。
しかし、起こらない可能性はほぼゼロであり、一刻の猶予もありません。
国民を守り、国家の衰退を回避するためにも、政府には強い意志を持って国土強靱化を可及的速やかに実行すること、そしてそうした投資拡大を基軸としてデフレ脱却を確実なものとすることを求めます
藤井 聡
京都大学大学院教授
日本の衰退が、様々な問題が連動する形で深刻化しています。
1997年に成長の止まった日本経済は、以来再び上昇に転じることもなく、失われた30年といわれる長期停滞を続けています。これに伴い国勢も衰え、世界2位であったGDPは、中国、さらにはドイツにも抜かれて4位に後退。かつてはG7の中でもトップであった一人当たりGDPもいまや最下位、世界ランキングでも37位に沈んでいます。日本の経済的プレゼンスはどんどん低下し、この状況が続けば10年後、20年後には東アジアの一貧国になってしまう可能性が濃厚です。
これに連動する形で、軍事、安全保障における危機も急速に高まっています。
20世紀の後半までは、盤石の日米安保体制によって日本は安全保障上の脅威に晒されることはほとんどありませんでした。しかし、近年はアメリカの相対的地位の低下により、軍事大国のロシア、台頭する中国、そして核装備を進める北朝鮮の脅威に晒され、いつ何時軍事的危機に直面しないとも限らない状況になっています。
こうした日本のプレゼンス低下は、他国の干渉を拒否する外交力の低下ももたらしています。
日本の国土、不動産、企業など、国力を支える様々な重要資産は次々と海外マネーに買収されています。LGBT法案や移民政策など、国民の合意を十分に得ていない政策が、他国の意向に従う形でどんどん推進されています。
TPPをはじめとする自由貿易協定も、必ずしも国益に適うものではなく、その煽りで日本の食料自給率はカロリーベースで38%に低迷。国内農家にそのしわ寄せが及ぶ一方で、海外の農家を豊かにするという理不尽な結果を招いています。この構図はエネルギー業界においても見受けられます。
……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇力の衰えた国がどれほど悲惨か
◇弱った日本の息の根を止める巨大災害
◇危機打開のための起死回生プラン
◇日本の再生を阻む元凶とは
◇蓮池の花が一斉開花するが如くに
あらゆる面において日本が衰退の傘を転げ落ちている最中、発生すると言われる南海トラフ地震。国土強靭化によっていかに日本を守っていくか、藤井さんに語っていただきます。
プロフィール
藤井 聡
ふじい・さとし――昭和43年奈良県生まれ。京都大学工学部卒業、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学大学院教授などを経て、平成21年より京都大学大学院工学研究科教授。24年から30年まで安倍内閣官房参与。著書に『日本滅亡論』(経営科学出版)など多数。
編集後記
地震に台風、洪水と自然災害大国である日本。にも拘らず、能登半島地震に見られるようにその備えは十分とは言えないのが現実です。日本の国土強靭化の必要性を訴え続けてきた藤井聡さんに、衰退を続ける日本の現状、危機を防ぎ、乗り越えていく処方箋をお話しいただきました。
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