1 月号ピックアップ記事 /対談
何が人を大成に導くのか 池森賢二(ファンケル名誉相談役・ファウンダー) 鳥羽博道(ドトールコーヒー名誉会長・創業者)
共に昭和12年生まれの87歳、徒手空拳から事業を興し、一代で日本を代表する企業へと導いてきた二人の立志伝中の人物がいる。ファンケル名誉相談役の池森賢二氏とドトールコーヒー名誉会長の鳥羽博道氏だ。30年以上にわたり親交を深めてきた道友が初めて語り合う人間学談義に、人生と経営を発展させる要諦を学ぶ。
「本気にも段位がある」
名人まで届かないにしても、少なくとも本気八段の努力をしないと物事は成就しない。勝つか負けるかではなく、勝つか死ぬか。
負けた時は死ぬ時というくらいの気概で努力することが大事ですね
鳥羽博道
ドトールコーヒー名誉会長・創業者
〈池森〉
鳥羽さんとは同じ昭和12年の生まれですけど、私のほうが4か月先輩ですね(笑)。
〈鳥羽〉
僕は10月で、池森さんは6月。先輩には頭が上がらない(笑)。池森さんのように意気軒昂でありたいと思っています。
〈池森〉
明日もゴルフに行きますよ。雨の予報が一転して晴れの予報に変わってね。私はものすごく晴れ男なんですよ。
お互い87歳ながら鳥羽さんは少年のような夢を持っている。これは非常に好感が持てます。
〈鳥羽〉
以前、堺屋太一さんと対談したことがあって、その時に堺屋さんが色紙を贈ってきたんです。「鳥羽君のため 堺屋太一」と。そこに4つの言葉が書いてありましてね。
最初が「稚夢」、幼い子供のような夢を見る。次に「気魄」、その夢に対して気魄を持って追いかけている。それと「人才」、人の才能、アイデアっていう意味だと思うんです。最後に「仏心」。
〈池森〉
やっぱり堺屋さんは本質をよく見抜かれていますね。どれも当たっていますよ。
世の中の不を解決していくところにビジネスが生まれる。
だから、「常識の壁を破れ」と。常識はクリエイティブの邪魔になりますよ。
常識の壁を破ると、そこに面白いものが見えてくる。
考えればアイデアは出てきますし、知恵は尽きることがない
池森賢二
ファンケル名誉相談役・ファウンダー
〈鳥羽〉
改めて思い返すと、確かに子供のような夢ばかり見て、その夢を追いかけている。それが多少若く見られる要因かもしれません。
〈池森〉
私は若い人たちに「夢を語れ」「夢を語れないリーダーは去れ」とよく言うんです。
私自身、こんなことをしたいんだ、こんな会社にしたいんだ、という夢を常に語ってきました。夢を語り、皆で共有することは大事ですよね。
〈鳥羽〉
共感共鳴というのが組織を強くすると思います。ですから、リーダーは共感共鳴するに値する夢やポリシーを持って、繰り返し語ること。
加えて、夢を実現するためのアイデアと次の時代を読む先見性、これがリーダーとして必要な条件だと思います。そして、根本には社員の成長と幸せを願っていることが欠かせません。
〈池森〉
それはもう絶対条件です。もう20年くらい前の話ですが、悩んでいた時にある先輩経営者が贈ってくれた言葉をいまでも大事にしています。
……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~ 全11ページ(約14,000字)
◇名経営者が語るリーダーの4条件
◇ターニングポイントを支えてくれた言葉
◇飛行機で偶然隣の席に 夢中で語り合ったあの日
◇自社の繁栄よりも日本の国益を優先する
◇「倒れても倒れない。それが経営者だ」
◇2400万円の借金を2年半で完済できた理由
◇不幸な人を絶対につくらない
◇「常識の壁を破れ」ファンケル飛躍の原点
◇ドトールコーヒーショップ知られざる誕生秘話
◇最大の逆境 その時どう動いたか
◇大成する人の人生心得帖
プロフィール
池森賢二
いけもり・けんじ――昭和12年三重県生まれ。34年小田原ガス入社。48年退社。55年無添加化粧品事業を個人創業。翌年、ジャパンファインケミカル販売(現・ファンケル)を設立。平成11年東証一部上場。令和元年会長退任。現在、未来を担う経営者の発掘・支援を積極的に行っている。著書に『企業存続のために知っておいてほしいこと』(PHP研究所)など。
鳥羽博道
とりば・ひろみち――昭和12年埼玉県生まれ。29年深谷商業高等学校中退。東京の飲食店勤務、喫茶店店長を経験し、33年ブラジルへ単身渡航。コーヒー農園で3年間働いた後、帰国。37年ドトールコーヒー設立。平成12年東証一部上場。17年会長に就任。18年より現職。著書に『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』(日経ビジネス人文庫)など。
編集後記
ファンケルとドトールコーヒー。それぞれの企業を創業し、今日の繁栄を築いた池森賢二さんと鳥羽博道さんに、今回表紙を飾っていただきました。共に87歳ながらも意気軒昂で、その溢れんばかりのバイタリティーに感銘を受けました。「常識の壁を破れ」「本気にも段位がある」といった実感のこもった珠玉の言葉から、一人ひとりの人生もまた経営であり、発展へと導く要諦を教えられます。
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