1 月号ピックアップ記事 /インタビュー
一人でも多くの人に〝ありがとう〞の言葉を届けたい サヘル・ローズ(俳優)
戦火の中のイランに生まれ、幼少期を孤児院で過ごしたサヘル・ローズさん。8歳の時に養母であるフローラさんと共に来日。現在は俳優・タレントとして幅広く活躍、難民などの国際人道支援活動にも尽力するサヘルさんに、壮絶な人生の歩みを交え、一人ひとりが心豊かに、幸せに生きるヒントをお聞きした。【写真=最愛のフローラさん[左]と共に】
まだ道半ばの私ですが、丁寧に生きていれば必ず誰かが見てくれていますし、人生は本当に鏡のようなもので、自分が日々どんな言葉を発しているか、どんな思いで努力しているか、投じたものが全部自分に跳ね返ってくることを実感しています
サヘル・ローズ
俳優
――サヘルさんの人生の原点、これまでの歩みをお話しください。
<サヘル>
私は1980年代、イラン・イラク戦争の最中に生まれました。私の記憶は4歳頃から始まるのですが、その時には既にイランの児童養護施設に入っていました。出生届が出されておらず、実の両親も、自分の名前も誕生日さえ分からない。いまの年齢も、当時の背丈から「これくらいだろう」と決められたものなんですよ。
両親の記憶がある子は、鏡を見てお母さんに似ている、お父さんはこんな人だったと似顔絵が描けるのですが、私を含めてそれができない子どもは大勢いた。鏡に映る自分は自分であって自分ではない。私はどこから来て、誰の血が流れているのだろうと、いつも考えていました。
――戦火の最中に両親と別れ、辛く寂しい幼少期を過ごされた。
<サヘル>
でも7歳頃、当時テヘラン大学の学生で人道ボランティアをしていたいまの養母・フローラと出会ったことが、私の人生を変えました。施設を訪れたフローラと初めて出会った瞬間「マダル(お母さん)」と呼んだんです。それまでどんな大人に出会っても、「お母さん」と呼んだことはなかった。そう「マダル」と呼ぶ私の目を真っ直すぐ見て抱き締めてくれた。
~本記事の内容~
◇忘れられていく人々の声なき声になる
◇養母・フローラとの運命的な出会い
◇無条件の肯定が人の心を癒やし励ます
◇あらゆることに感謝して生きる
本記事では、サヘル・ローズさんに、国籍や人種を越えて、誰もがよりよい人生を送っていくヒントを語っていただきます。
プロフィール
サヘル・ローズ
1985年イラン生まれ。幼少期から孤児院で暮らし、7歳でフローラの養女として引き取られる。8歳でフローラと共に来日。高校時代から芸能活動を始め、俳優としても映画やテレビで活躍。主演映画『冷たい床』は様々な国際映画祭で正式出品され、イタリア・ミラノ国際映画祭にて最優秀主演女優賞を受賞。また、過去には国際人権NGO「すべての子どもに家庭を」の活動にも参加し、親善大使を務め、私的にも国内外の子供たちや難民たちの援助を続けている。アメリカの人権活動家賞受賞。著書に『Dear16とおりのへいわへのちかい』(イマジネイション・プラス)『これから大人になるアナタに伝えたい10のこと:自分を愛し、困難を乗りこえる力』(童心社)など。現在初監督作品『花束』が公開され、大きな話題を呼んでいる。
編集後記
養母・フローラさんがつくってくれたというイランの美しい伝統衣装を纏って取材に応じてくださったサヘルさん。体験から紡ぎ出した力強い言葉で、私たちがよりよい人生、幸せな社会を実現していくヒントを語ってくださいました。
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