1 月号ピックアップ記事 /エッセイ
人生のどんな状況にも意味がある——私がフランクルに学んだこと 勝田茅生(日本ロゴセラピスト協会会長)
「生きる意味」が分からない、と悩んだ経験がある人は少なくないだろう。そのような状況で、自分が人生から何を期待するかではなく、人生が自分に期待しているものに目を向けよ、と説いたのが、先の大戦でナチスの迫害を生き抜いた精神科医・フランクルだった。その精神療法を日本人で初めて受け継いだ勝田茅生さんが現代に伝えるメッセージ。
人生を相手に、常に最善の「手」を差し続けるならば、人生のどんな状況でも意味を実現できます
勝田茅生
日本ロゴセラピスト協会会長
ウィーン出身の精神科医ヴィクトール・E・フランクル。第二次世界大戦下、故郷を遠く離れた強制収容所に送られ、絶望的な状況から奇跡的な生還を果たしました。その壮絶な体験を綴った『夜と霧』の著者として、彼をご存じの方は多いでしょう。
この本の印象から、厳格な人物だったと考えている方もいます。ただその素顔は、とにかく楽観的でユーモアに溢れる人でした。
過去に耐え難い苦悩を味わってなぜそのような生き方ができたのでしょう。
彼は〝引き潮の岩礁〟の譬え話を残しています。満潮の時には見えない海中の岩礁は、引き潮の時に現れることがあります。この岩をトラウマや悲しい思い出だとしましょう。心が満たされていない時には、頭の中にそればかりが姿を現すのです。
結論から言うと、人が不快なことをあれこれ考え、鬱々としてしまう原因は、岩礁があるからではない。潮が満ちていないことが原因なのです。
では、どうすれば海の潮を満たせるか。それはいま、自分に求められている意味のある課題や役割に気づき、それを責任をもって実現させることです。
彼が確立したロゴセラピーは、まさにそれを目指した心理療法です。
~本記事の内容~
◇「意味」を軸にして生きるということ
◇人生の〝嵐〟に見舞われて
◇人生は、振り返るとすべてに意味がある
◇極限状態で鍛え抜かれた思想
◇あなたはどんな〝砂時計〟を遺したいか
勝田さんが読み込んだフランクルの著書『医師によるメンタルケア』
プロフィール
勝田茅生
かつた・かやお――1945年静岡県生まれ。1970年上智大学文学部哲学科修士課程修了後、ミュンヘン大学博士課程入学。1976年児童音楽教育指導の資格を取得。2000年日本人で初めて南ドイツ・ロゴセラピー研究所公認ロゴセラピストとなる。主著に『ロゴセラピーと物語:フランクルが教える〈意味の人間学〉』(新教出版社)『ヴィクトール・フランクル それでも人生には意味がある』(NHK出版)。
編集後記
名著『夜と霧』で知られるフランクル。悲惨な迫害を耐え抜いた強さの根底には、学生時代に構想した心理療法がありました。どんな状況でも向き合い方によって、その「意味」を実現できる。人生の試練を経て、その手法と思想を掴んだ勝田茅生さんの解説に勇気づけられます。
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