12 月号ピックアップ記事 /エッセイ
伊勢神宮が教えてくれたもの 吉川竜実(伊勢神宮参事)
日本人の〝心のふるさと〟とされる三重県・伊勢神宮。神職として神宮に奉仕して36年になる吉川竜実氏は、神宮の歴史や神道の精神を深く学ぶ中で、生き方のヒントとなる多くの知恵を感じ取っていったという。日々の人生の心得から大きくは日本人のあり方まで、伊勢神宮に教えられたことをお話しいただいた。【写真提供=神宮司庁】
いくら避けて通りたい出来事であったとしても、そこには何かの神意が込められています。
その出来事を必要、必然、ベストと捉えて、また、神様の大いなる働きに身を委ねる思いで今の一瞬一瞬に持てる精いっぱいの力で向き合っていくことが神道的な生き方なのではないでしょうか
吉川竜実
伊勢神宮参事
歴史の困難の中で幾たびも日本という国を守り、日本の地に暮らす人々の心の支えになってきた伊勢神宮。私は8万社以上ある神社の中心に位置するこの伊勢神宮に奉職して36年を迎え、神官として様々な神事や神宮の運営に携わってきました。
その中で気づいたのは、伊勢神宮に受け継がれてきた精神や神道の教えには、この厳しい混迷の時代を乗り越えるための幾つもの知恵があり、ことに人間としての原点をいま一度見つめ直すことの大切さでした。
本欄では、私が得た気づきの一端をお伝えできたらと思います。
伊勢神宮は正式名称を「神宮」といい、皇室の祖先神である天照大御神を祀る内宮(皇大神宮)と、衣食住を育む産業の守り神である豊受大御神〈とようけのおおみかみ〉を祀る外宮(豊受大神宮)を中心に125の宮社で構成されています。その創祀は内宮が2000年前、外宮は1500年前とされ、古来、日本人の憧れと崇敬の対象となってきました。
庶民が旅をするようになった江戸時代にはお伊勢参りが流行し、江戸後期の文政13(1830)年には半年間で全人口の実に6人に1人に当たる460万人が参詣したと記録されています。現代でも1年間の参拝者は約800万人。これは東京ディズニーランドに次いで多い数です。
私は、、、
~本記事の内容~
◇神道とは直感の宗教
◇伊勢神宮が〝心のふるさと〟である理由
◇今この瞬間こそが神代、理想の世界
◇ゼロに戻ると直感や閃きが下りてくる
プロフィール
吉川竜実
よしかわ・たつみ――昭和39年大阪府生まれ。皇學館大学大学院博士前期課程修了後、平成元年伊勢神宮に奉職。2年即位礼及び大嘗祭後の天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、5年第六十一回式年遷宮、25年第六十二回式年遷宮、31年御退位につき天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、令和元年即位礼及び大嘗祭後の天皇(今上)陛下神宮御親謁の儀に奉仕。神宮禰宜を経て現在神宮参事。平成29年神道文化賞受賞。著書に『いちばん大事な生き方は、伊勢神宮が教えてくれる』(サンマーク出版)などがある。
編集後記
「ここは心のふるさとか そぞろ詣れば旅ごころ うたた童にかへるかな」。かつて伊勢神宮を訪れた作家・吉川英治はこのように詠みました。神宮参事の吉川竜実さんのお話からは、日本人の〝心のふるさと〟であり続けた伊勢神宮の魅力と神道の教えの本質が伝わってきます。
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