我が百寿の人生を歩み来て ~利をはなれ心のすべて無なる時 有を生ずる 世とぞ知りたり ~ 川島英子(塩瀬総本家会長/第三十四代当主)

日本の饅頭の元祖として創業から675年の歴史を紡ぐ塩瀬総本家。時代の風雪に耐え、代々の当主たちが暖簾を大切に守り続けてきた。第34代当主を務めた会長の川島英子さんは今年満100歳を迎え、その矍鑠たる姿、淀みのない語り口はまさに圧巻である。時に優しく時に力強く、幾多の山坂を越えてきた人生体験を交えながら語る「人生百年時代を溌剌と生き抜くヒント」に学ぶ。

人生で一番大事だと思うのは、こだわらない、握らないことですね。

握らないっていうのは欲をかかないこと。握ろうとすると逃げるの。だから、握らない。追いかけない。放すことです。

こだわりすぎると運は開けません

川島英子
塩瀬総本家会長/第三十四代当主

――川島会長、お目にかかれて光栄です。素敵なお着物姿ですね。

〈川島〉
本当にありがたいことに、この歳になっても年中お客さんがいらっしゃって、「会長さん元気?」「会いたいわ」とか「長生きをもらいたいから握手して」って(笑)。

そんなことでいつ誰が訪ねてくるか分からないから、変な格好をしていられないのよ。朝起きて寝間着のままでいたんじゃ、だらしなくて目が覚めない。

やっぱり着物に着替えて帯を締めて髪を結うと身も心もシャキッとする。これは昔から習慣になっています。

――実に矍鑠〈かくしゃく〉とされていて、100歳とは思えません。

〈川島〉
社員も大変なことがあると私のところに相談に来ますから、あまりボヤッとしている暇がない。お菓子屋をやっているおかげさまですね。

緊張感や刺激が常にあるわけで、それがやっぱり元気の素、健康の秘訣じゃないでしょうか。いつの間にか100歳になっちゃったという感じ(笑)。

それと、私は……(続きは本誌をご覧ください)

~本記事の内容~
◇健康の秘訣は日常の習慣にあり
◇和歌を詠むことが生きるしるべ
◇「遊」の境地で仕事を楽しむ
◇働き者の両親が教えてくれたこと
◇塩瀬の歴史を変えた決断 その拠り所になった思い
◇伝統を守りつつ挑戦する「温故知新」こそ老舗の道
◇こだわらない、握らない 放すことで運が開く
◇すべてに感謝する ご先祖様を大切にする

本記事では全7ページ(約7,000字)にわたって、100歳現役・塩瀬総本家会長の川島英子さんのインタビューを掲載しています。

プロフィール

川島英子

かわしま・えいこ――大正13年東京生まれ。昭和55年社長に就任し、第34代当主を継ぐ。60年中国杭州市の聚景園に始祖・林浄因の記念碑を建立(平成7年に林浄因の先祖の墓がある西湖国立公園孤山に移転)、11年会長に就任。著書に『まんじゅう屋繁盛記~塩瀬の六五〇年~』(岩波書店)がある。


編集後記

トップインタビューを飾っていただいたのは、塩瀬総本家会長の川島英子さん、御年100歳です。本誌ご登場は12年ぶり。お目にかかったのはその時以来ですが、愛嬌溢れる笑顔で私たちを出迎えてくださり、老いを感じさせないほど意気軒昂で驚嘆しました。日本の饅頭の元祖として、室町時代より675年もの歴史を有する老舗の暖簾をいかに守ってきたのか。生涯現役で健康に生きる秘訣とは何か。軽妙洒脱な語りにどんどん惹き込まれるでしょう。

2024年11月1日 発行/ 12 月号

特集 生き方のヒント

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