稲盛和夫に学んだ運命を高める生き方 大田嘉仁(日本航空元会長補佐専務執行役員)

稀代の名経営者・稲盛和夫氏の側近として30年近く行動を共にしてきた大田嘉仁氏。稲盛氏と共にJALの再建に携わり、2年7か月という短期間での奇跡の再上場に大きな役割を果たした。その大田氏がこのたび弊社より、稲盛氏の傍らで聞いた言葉を書き留めた60冊の秘蔵ノートの中から、特に心に残った言葉をピックアップしてまとめた『運命をひらく生き方ノート』を刊行した。大田氏が稲盛氏から学んだ「生き方のヒント」とはどういうものだったのか。書籍発刊に至る歩みと共に振り返っていただいた。

善きことを思うのがすべての始まり

稲盛和夫

昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰する。中小企業経営者のための勉強会「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ(令和元年解散)。令和4年8月24日、90歳で逝去。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』『稲盛和夫一日一言』(いずれも致知出版社)など多数。

稲盛さんは「人を見抜き、育て、そして天分を開花させる」とも教えていますが、「人を見抜く」というのは明るい未来を目指してコツコツと努力を継続できる人間なのかどうかを見抜くことであり、「育てる」とは、その愚直な努力を認めて継続させることです。

そうすれば、時間はかかっても「天分を開花させる」ことができる。「継続が愚鈍を非凡に変える」のです

大田嘉仁
日本航空元会長補佐専務執行役員

1978年、新卒で京セラに就職した私は、1991年春に稲盛和夫さんが政府の第三次行政改革審議会部会長に抜擢された際、突然、特命秘書に任命されました。それ以来、京セラを退任するまでの30年近い時間を共有し、稲盛さんの謦咳に接してきました。

その間、私は稲盛さんと話をしていて気になったこと、気づいたことなどをノートにメモし、そのノートは退任時には60冊ほどになっていました。そのことを日頃から親しくさせていただいている致知出版社の藤尾秀昭社長にお話しすると、「貴重な記録なので、そこから印象に残る稲盛さんの言葉を抜き出して書籍としてまとめてみたらどうですか? きっと、世の中に役立つはずです」とのご提案をいただきました。

私自身もせっかくのノートをそのままにしておくのはもったいないという気がしていたので「分かりました」とお答えし、改めてノートを読み返してみることにしました。

いざノートを開いてみると、走り書きでよく読めない字も多く、言葉を選び出すまでに膨大な時間がかかりました。ただ、不思議なことに、8割くらいノートを読み終えたあたりから、「私をピックアップしてほしい」と言葉のほうから目に飛び込んでくるように感じ始め、読み返す作業は少し楽しくなりました。

また、「あの時、稲盛さんはああ言っていたな」と懐かしく思い出したり、「こんなにいい言葉をなぜ覚えていなかったのだろう」と残念に思ったりすることもありました。夢中になってそのような作業を続けていると、目の前に稲盛さんがいて会話をしているような感覚に襲われたりもしました。

その意味では、ノートから2,000個近くの言葉を抜き出し、それを分類・整理し、さらに言葉を選ぶという作業は、苦労は多かったものの、結果として貴重な経験になったように思います。

……(続きは本誌をご覧ください)

~本記事の内容~
◇2,000個近くの言葉をピックアップ
◇人生を励ます言葉
◇稲盛経営哲学を凝縮した言葉
◇JAL再建時に役立った言葉
◇人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力の原点
◇人生に確固とした哲学を持つ

本記事では、大田さんの秘蔵ノートを基に稲盛氏の知られざる実像、人生をひらく珠玉の言葉が語られます。

プロフィール

大田嘉仁

おおた・よしひと――昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(МBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年12月日本航空(JAL)会長補佐・専務執行役員を兼務(25年3月退任)。27年12月京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任(30年3月退任)。令和元年㈱MTG取締役会長就任。現在は、立命館大学評議員、八坂神社崇敬会常任幹事、日本産業推進機構特別顧問、鴻池運輸社外取締役、新日本科学顧問、МTG相談役などを務める。著書に『JALの奇跡』『運命をひらく生き方ノート』(共に致知出版社)などがある。


編集後記

京セラ創業者・稲盛和夫氏に30年近く仕えた大田嘉仁さんは、折節に稲盛氏が発した言葉をノートに記録し続けてきました。その数、何と60冊。この度、秘蔵ノートを基に『運命をひらく生き方ノート』を上梓した大田さんに、心を高め運命を伸ばす珠玉の言葉を紐解いていただきます。

2024年11月1日 発行/ 12 月号

特集 生き方のヒント

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