12 月号ピックアップ記事 /対談
吉田松陰の言葉が教える人生の要諦 上田俊成(松陰神社名誉宮司) 田中正徳(ショウイングループ会長)
高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、山縣有朋……主宰する松下村塾にて、明治維新の原動力となる多くの志士を育てた幕末の英傑・吉田松陰。その志はいまなお不滅の輝きを放ち、私たちを揺り動かし続けている。明治維新胎動の地・山口県萩市に鎮座する松陰神社名誉宮司の上田俊成氏、吉田松陰の教育実践を生かした学習塾「松陰塾」を全国約300か所でFC展開するショウイングループ会長・田中正徳氏のお二人に、実体験を交え、人生を導きひらく英傑の生き方、言葉を紐解いていただいた。
人の道を正しく立派に生きるかどうか、また自分の目指した学問や仕事が成功するかどうかは、まずしっかりとした志を立てることから始まるものであり、志があれば何事もできないことはないのです
上田俊成
松陰神社名誉宮司
〈田中〉
上田名誉宮司とは毎月のようにお会いしていますけれども、このような改まった場で対談させていただくのは初めてですね。
〈上田〉
そうですね。田中会長さんと最初にお会いしたのは確か……。
〈田中〉
いまから10年前、2014年でした。ショウイングループでは、明治維新の原動力となった志士たちを育てた吉田松陰先生の教育理念を受け継ぐ学習塾「松陰塾」をフランチャイズ(FC)展開していることもあって、2010年から毎年全社員を連れて松陰神社に正式参拝していました。
その度に神社の境内にある、松陰先生が主宰した松下村塾を横目に見ながら、いつか建物に上がって見学したいなと思っていたのですが、2014年に神社の方に相談してみたところ、「観光目的で入ることはできないけれども、宮司の講義を聴く学習目的であればよいですよ」と許可をいただきました。「それならば」ということでさっそくお願いし、上田名誉宮司にもお目に掛かり、毎年、正式参拝後に松下村塾内で講義をしていただくようになったんです。
毎回の講義は本当に学びの連続で、私から見れば名誉宮司は〝現代の松陰先生〟というべき尊敬する師であり、その教えにどれだけ導かれてきたか分かりません。
〈上田〉
それは言い過ぎです(笑)。でも本当に熱心に講義を聴いてくださって、感心していました。
いくら先人の教えを学んでも、評論家のように議論ばかりしていては意味がありません。
教えは実践実行して初めて自分の経験になり、世の中にも貢献できるのだと思うのです
田中正徳
ショウイングループ会長
〈田中〉
また、2017年4月に正式参拝をした時、まさか許可いただけるとは思っていませんでしたから、軽い気持ちで松陰先生の顕彰碑を境内に建てたい旨をお伝えしました。すると、上田名誉宮司は「企画書を持ってきなさい」と真剣に受け止めてくださった。
1か月で企画書を取りまとめ、最終的に、松陰先生の門下生を中心に五十三柱をお祀りする松門神社の社殿へと続く約80メートルの小道、北参道を「学びの道」と命名し、顕彰碑と二十五基の句碑(吉田松陰の言葉)を建立させていただくことになりました。顕彰碑の表には「松陰塾」の塾名が入り、松下村塾を継承する塾としてお墨つきをいただきました。
松下村塾は国の史跡であり、2015年に世界文化遺産に登録されていますから、その近くに構造物をつくるには、文部科学省などから許可を得る必要がありました。上田名誉宮司のご尽力なくしては決して実現できませんでした。
〈上田〉
田中会長さんは軽い気持ちとおっしゃいましたけれども、受け取る側は大真面目でした。というのは、松陰神社の本殿に繋がる参道に比べ、北参道は参拝の方があまり通らず閑散としており、予て何かよい方法はないだろうかと考えていたのです。そこに田中会長さんから素晴らしい企画をいただいたので、飛びついたわけです。
実際、記念碑と句碑に興味を持つ方は非常に多く、いまではたくさんの方が「学びの道」を通ってくださっています。さらに松陰先生の言葉はなかなか理解が難しいとのことで、田中会長さんは句碑の言葉の解説書までつくってくださった。本当に有り難い限りです。
私が思う田中会長さんの素晴らしいところは、松陰先生の教育を深く理解して松陰塾の運営・発展に邁進されていると共に、素晴らしいアイデアマンであることです。「学びの道」の他にも松陰神社のために様々な提案、貢献をしてくださっている。私のほうこそ田中会長さんを大変尊敬しております。
……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
◇吉田松陰の志が結ぶ二人の縁
◇見えない力に導かれて
◇人性を涵養する
◇囚人たちを一変させた獄中教育
◇人物を見抜き個性を伸ばす
◇松陰先生の教えを心の糧にして歩む
◇確かな志を立てる そこからすべては始まる
◇先人の言葉が教える人生を開く極意
上田さんと田中さんが語り合う、幕末の英傑・吉田松陰の生涯と言葉に生きる力、困難を突破する要諦を学びます。
プロフィール
上田俊成
うえだ・とししげ――昭和16年山口県生まれ。國學院大學史学科卒業。飯山八幡宮宮司、山口県神社庁長、神社本庁理事、山口県文化連盟会長、長門市文化振興財団理事長を歴任。平成15年松陰神社宮司を経て、28年より名誉宮司・顧問に。著書に『零言集』(マシヤマ印刷)の他、『熱誠の人吉田松陰語録に学ぶ人間力を高める生き方』(致知出版社)などがある。
田中正徳
たなか・まさのり――昭和31年福岡県生まれ。福岡大学建築学科卒業。「ショウイン式」創始者。松陰塾FC全国300校舎、生徒数9000名を擁する大手塾へと成長させた。一般社団法人日本語力検定協会理事長。学校法人萩明倫館高等学校理事長。著書に『松下村塾のつくりかた』『AI時代の衝撃!「教えない学習塾」成功の秘密!!』(共に海鳥社)。令和6年紺綬褒章受章。
編集後記
明治維新の英傑たちを育てた吉田松陰の志を継承する松陰神社名誉宮司の上田俊成さんとショウイングループ会長の田中正徳さん。お二人の対談は長州藩時代の史跡がいまも数多く残る山口県萩に鎮座する松陰神社立志殿にて行われました。前日までの雨予報が嘘のように晴れ渡り、天恵を感じつつ、松陰の生涯や言葉を通して、確たる志を立て修養を重ね人生を切り拓く要訣を学ぶことができました。
特集
ピックアップ記事
-
対談
百年続く企業はどこが違うのか
服部真二(セイコーグループ会長)
藤間秋男(TOMAコンサルタンツグループ会長)
-
インタビュー
我が百寿の人生を歩み来て ~利をはなれ心のすべて無なる時 有を生ずる 世とぞ知りたり ~
川島英子(塩瀬総本家会長/第三十四代当主)
-
エッセイ
稲盛和夫に学んだ運命を高める生き方
大田嘉仁(日本航空元会長補佐専務執行役員)
-
エッセイ
伊勢神宮が教えてくれたもの
吉川竜実(伊勢神宮参事)
-
インタビュー
不老の剣を求めて、歩み続ける
馬場欽司(古流越後流居合抜刀術宗匠)
-
インタビュー
あったかいごはんがこどもの命と心を元気にする
川辺康子(西成チャイルド・ケア・センタ ー代表理事)
-
インタビュー
ギブ・ギブ・ギブ&テイクの姿勢が人生を切り開く
山岡彰彦 (アクセルレイト21社長)
-
対談
0歳からの子育て ~子育てにも法則がある~
内田伸子(お茶の水女子大学名誉教授)
佐藤亮子(教育評論家)
-
対談
吉田松陰の言葉が教える人生の要諦
上田俊成(松陰神社名誉宮司)
田中正徳(ショウイングループ会長)
好評連載
ピックアップ連載
-
私の座右銘
利他主義
井上高志 (LIFULL会長)
-
二十代をどう生きるか
挑戦と創造の教育
大橋 博 (創志学園グループ総長)
-
第一線で活躍する女性
自分の限界を決めないで、新しいことに挑み続ける
湯本壬喜枝(リスカーレ・コンサルティング代表)
-
生涯現役
親にもらった命を使い切って死のう
永山久夫 (食文化史研究家)
-
意見・判断
日本の海は海上保安庁が守る! ~尖閣諸島を巡る知られざる攻防の実態~
奥島高弘(第四十六代海上保安庁長官)
-
大自然と体心
自己免疫力を高める生き方 ~この冬を乗り切る心身のデトックス術~
石黒成治(消化器外科医・ヘルスコーチ)
-
二宮尊徳 ~世界に誇るべき偉人の生涯~
【第9回】思想爆発と報徳思想の確立
北 康利(作家)
月刊誌『致知』のバックナンバー
バックナンバーについて
バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます
過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。
定期購読のお申込み
『致知』は書店ではお求めになれません。
電話でのお申込み
03-3796-2111 (代表)
受付時間 : 9:00~17:30(平日)
お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード