10 月号ピックアップ記事 /インタビュー
常に考える——創業精神の継承が会社の未来を創る 山田雅裕(未来工業相談役)
「常に考える」を標語に、社員の主体性や提案力をぐんぐん引き出すユニークな社風で、「日本一社員が幸せな会社」と称される未来工業(岐阜県)。全国に営業所や工場を有し、グループ全体の社員数は約1,200名、2024年3月期決算の売り上げは約440億円、経常利益70億円という電気・設備資材メーカーの雄である。創業者のご子息として同社を牽引してきた相談役の山田雅裕氏に、社員、組織の持てる力を発揮させていく要諦についてお話しいただいた。
当社は創業者の「常に考える」から生まれた独自の社風、他が真似できない商品があったからこそ、ここまで生かされ、歩んでくることができました。どの企業も同じだと思いますが、創業の精神こそ当社を生かす道そのものなんです
山田雅裕
未来工業相談役
――社員の主体性、やる気を引き出す社風で、1965年の創業以来赤字なし、毎年10%を超える経常利益を出し続け、「日本一社員が幸せ」と称される会社が岐阜にあると伺いやってまいりました。
<山田>
当社の標語(企業理念)は非常にシンプルでして、創業者たちがつくった「常に考える」以外にないんですよ。世界的なIT企業であるIBMの標語も「Think(考える)」ですけれども、私たちには「常に」がついていますから、その上を行くんだくらいの思いで1秒、1分でもいいから多く会社のこと、仕事のことを考え、実践してほしいと社員に伝えています。
そのために、当社では社員からの提案に対して採用・不採用に拘らず一律500円を支給する提案制度を取り入れているんです。さらに年間の提案数が200件を超えると、提案数の報奨金とは別に5万円を支給しています。
お金で社員を釣るのかと言われそうですが、実際にこの制度によって社員の仕事へのモチベーションは非常に高いものがあり、特に男性社員は車を買う、結婚する、子供が生まれる、家を購入する時期になると、ダーッと提案数が伸びる。ですから、周りに何と言われようと、常に考え提案する習慣、社員のモチベーションアップに繋つながるのであればやるべきだと思って続けてきました。
――常に考える習慣を身につけることが何よりも大事であると。
<山田>
また、社員の提案にお金を支給するのは、逆に会社として負担じゃないかとおっしゃる方もいます。しかし、例えば、本社工場で改善提案が出れば、それは他の工場にも水平展開で取り入れられていって、結果的にどの現場でも効率、生産性が向上し業績にもよい影響を与えていくんです。
……
~本記事の内容~
◇生き残るためには常に考えるしかなかった
◇社員を信じるから社員に信じられる
◇社員の〝やる気〟こそ事業発展の根源
◇創業のDNAの伝承が人と会社を生かす道
山田さんのインタビューには、社員のやる気を引き出し、経営を発展させていく極意が満載です。続きは本誌でご覧ください。
プロフィール
山田雅裕
やまだ・まさひろ――昭和38年岐阜県生まれ。大学卒業後、未来工業に入社。松本営業所長、製造企画課長、山形工場長、監査室長などを歴任する。平成20年に子会社・神保電器に出向し社長に就任。経営再建に取り組み、24年には最高益を達成。25年未来工業の代表取締役社長。令和6年より現職。
編集後記
現場の社員から改善提案がどんどん出てくる未来工業。その本社に入るや否や、目に飛び込んできたのは「常に考える」の標語。それは社内の至るところに掲げてあり、標語を標語で終わせない同社の本気さが伝わってきました。創業者の長男である山田雅裕さんからは、社員のやる気を引き出し、社業を発展させる具体的な取り組みが語られ、まさに停滞を続ける日本経済を活性化させていくヒント満ち溢れたインタビューでした。
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