漆芸の道に生き、生かされて 高名秀人光(漆芸家)

輪島塗や風光明媚な自然で広く知られる石川県輪島市で生まれ育ち、「サヨリ」をモチーフにした独自の作品をつくり続けている漆芸家の高名秀人光氏、68歳。漆の道一筋に50年歩んできた氏に、先の能登半島地震で甚大な被害を受けた故郷復興への思い、そして厳しい修業と創作活動の中から掴んだ運命・仕事をひらく要諦を語っていただいた。

これからもご縁を大切に決して努力と自己研鑽を怠らず、作品を通じて一人でも多くの人に生きる力を与えていくと共に、一日も早い故郷の復興に全力を尽くしていきたい。そう念じています

高名秀人光
漆芸家

――輪島市内には倒壊したままの家屋やビルなど、今年1月1日に発生した能登半島地震(マグニチュード7.6、死者341人)の爪痕がいまもなお生々しく残っており、とても胸が痛みます。

<高名> 
私は故郷の輪島を拠点に漆芸家として活動を続けてきましたが、今回の地震はこれまで経験したことのない凄まじいものでした。

1月1日の午後4時10分。自宅で家族とくつろいでいた時に突然揺れが襲い、家具や食器は次々なぎ倒され、あまりの衝撃と恐怖で身動きが取れないほどでした。

揺れが収まり外に出ると、自宅の被害はそれほどでもなかったのですが、周囲の家々は倒壊し、道路はひび割れ陥没、マンホールは腰の高さまで飛び出していました。また、発令された大津波警報の防災放送やスマートフォンのサイレン音が鳴り響き、まるでこの世の終わりのような状況でしたね。

――想像を絶します。

<高名> 
その後、車で山側方面に逃げたのですが、途中にふと後ろを振り返ると、空が真っ赤になっていたんですよ。家が焼けてしまったと絶句しましたが、これは200棟以上を焼いた朝市通りの火災によるものだと後で分かりました。

余震があったため、車中泊をしたんですけれども、結局4日目に自宅に戻りました。電気は割とすぐに復旧したものの、水道は3月上旬まで使えず、それまでは毎日水を汲みに行き、自衛隊が設置してくれたお風呂に入る日々が続きました。

でも、家族が皆無事だっただけで本当によかったなと……。実際、私の知る人でも、二軒隣の方、漆芸の指導を受けた先生ご夫妻がお亡くなりになりました。

……(続きは本誌でご覧ください)

~本記事の内容~
◇故郷・輪島の復興に向けて
◇教えは見て感じて自ら掴み取るもの
◇学業と修業の両立を支えた「克己」の精神
◇洋画には洋画の漆には漆の絵がある
◇必死の努力の積み重ねがそのまま道となる

漆芸家として50年歩み続けてきた高名さんが語る、一道を極める要諦、成長し続けるための心構えとは――。

プロフィール

高名秀人光

たかな・ひでみつ――昭和31年石川県生まれ。中学卒業後、定時制高校で学びながら輪島塗メーカーにて6年間修業。56年石川県立輪島漆芸技術研修所卒業。58年第15回日展で初入選。平成23年第43回日展で特選。神戸市の湊川神社や伊勢市の伊勢神宮に作品奉納。公益社団法人日展会員、一般社団法人工芸美術日工会常務理事。


編集後記

取材は能登半島地震の傷跡が生々しく残る輪島市にある高名さんのご自宅にて行われました。被災体験と共に、故郷の復興への願い、漆芸家としての50年の歩みを語っていただきました。どんな状況に直面しても諦めずに続ける。その大切さを教えられるインタビューでした。

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