10 月号ピックアップ記事 /対談
人間の可能性をこうして花開かせてきた 林 成之(スポーツ脳科学者) 小泉敏男(東京いずみ幼稚園園長)
人間には無限の可能性がある、とよく耳にする。しかしどうすればそれが花開くのか。解を持つ人は少ない。その中にあって、脳神経外科医として世界初の「脳低温療法」を確立、さらに脳科学を生かして多数の五輪メダリストを育成してきた林成之氏。専門外から幼児教育の道に入り、大人でも難しい古典・名文を園児がすらすら読みこなす、卒園児の平均IQが120という稀有な幼稚園をつくり上げた小泉敏男氏。人育てという普遍のテーマに挑む両氏の実践訓に耳を傾けたい。
人のためになる「原点」に従って「全力投球」する時、潜在能力は最もよく発揮される
林 成之
スポーツ脳科学者
〈小泉〉
林先生、初めまして。小泉です。お邪魔いたします。
〈林〉
我が家までご足労いただいて、ありがとうございます。どうぞ、おかけください。
〈小泉〉
尊敬する先生にお目にかかれて、本当に光栄です。
〈林〉
小泉先生が致知出版社から出される『国語に強くなる音読ドリル』の原稿と、去年の『致知』7月号の記事を編集部に送ってもらって、読みましたよ。すごいですね。僕も先生から教わっていたら、もっとましな人間になれたな。
〈小泉〉
いやいや(笑)。
〈林〉
本当に思いましたよ。幼稚園の子供たちが正座して瞑想している写真があったでしょう。背筋がピシーッとしていてね。
それと、音読学習。読ませているのは大人でも難しい、日本を代表する文学や古典の名文だというじゃないですか。それを3歳くらいの子供に教えるって、信じられない。子供たちも素直に受け止めて、すらすら読んでしまうんですから、大したものです。
脳の発達に合わせて、先人たちから受け継がれてきたいいものを与えて、楽しみながら学ぶ環境さえ整えてあげれば、自分で学んで成長していく。それを大人の先入観で邪魔してはいけない
小泉敏男
東京いずみ幼稚園園長
〈小泉〉
幼稚園を立ち上げて来年で50年になります。私は大学時代、小中学生を対象に塾を開いていましてね。いろいろな子供、特に成績が悪くて悩む子を見ながら、就学前の家庭で過ごす乳児期、幼稚園での教育が大きく影響するんだなと常々感じていたんです。
だから父と幼稚園をつくってから、来てくれた子にできる限りの教育をしてあげたくて、子供の発達によさそうだと感じた教育法はどんどん取り入れてきました。結果、皆が想像以上に成長してくれたというのが正直な実感です。
〈林〉
子供の才能、潜在能力を引き出す名人だと思いましたね。
〈小泉〉
それが、確かに長く子供を見てきて、自分たちの教育にそれなりの自信はつきました。ただ幼児教育を専門に勉強した人間ではないので、裏づけがないわけです。
それで別の脳科学者の先生にお会いしたり本を読んだり、随分もがきまして、十数年前に林先生のご著書と出合いました。特に『素質と思考の「脳科学」で子どもは伸びる』は、教育を実践する中で漠然と感じていたことが、雲が晴れるように明快になっていく感覚がありました。これってやっぱり脳によかったんだ! と一文一文に力を得る思いで読みましたね。
先生のおかげでようやく「子育ては脳育てですよ」とはっきりとお伝えできるようになりました。
……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
■脳科学と教育の交差点で
■本能という基盤を鍛えて伸ばす
■「あなたは一人で四人分、頑張って」
■語彙が乏しいことの悲しさ
■幼児教育にはびこる先入観との闘い
■脳を前向きな気持ちで動かす
■ほんの少しの工夫が潜在能力を発現させる
■勝手に本能が育つ〝心のプレート〟づくり
■潜在能力を引き出す言葉の使い方
■いいところを摘んで、喜ぶ
■人育てという国育ての道を歩く
人育ての名人――そう呼ぶに相応しいお二人が、脳科学と実際の指導、教育体験を踏まえて語り合う〝可能性の花開かせ方〟に興味は尽きません。
プロフィール
林 成之
はやし・なりゆき――昭和14年富山県生まれ。日本大学医学部、同大学大学院博士課程修了。マイアミ大学医学部、同大学救命救急センターに留学。平成3年日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター部長に就任。27年より同大名誉教授。脳低温療法を開発し、医学界に貢献する傍ら、トップアスリートの指導に関わる。著書多数。『運を強くする潜在能力の鍛え方』(致知出版社)を刊行予定。
小泉敏男
こいずみ・としお――昭和27年東京都生まれ。大学在学中に小泉補習塾を運営、卒業後の51年父と共にいずみ幼稚園を創設し、副園長に就任。石井式漢字教育、ミュージックステップ音感教育など画期的なプログラムを早期に導入。平成7年より園長。16年第13回音楽教育振興賞を幼児教育界で初めて受賞する。近刊に『国語に強くなる音読ドリル』(小泉貴史氏と共同監修/致知出版社)がある。
編集後記
脳科学者と幼児教育者。立場は違えど、教育を通じて稀有な実績を上げてきた林成之さんと小泉敏男さんの対談は、小泉さんが約10年、林さんに私淑し、幼稚園の教育に生かしていたことから実現しました。脳の仕組みを知り、姿勢や語彙、意識を変えることが、底知れないと言われる人間の潜在能力を花開かせる妙諦だと教わりました。近く弊社より発売するそれぞれの新刊にもご期待ください。
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