すべては、世界に誇る「國酒」を飲んでもらうために 久慈浩介(南部美人五代目蔵元)

岩手県の内陸北端・二戸(にのへ)の街中に、122年の歴史を刻む酒蔵がある。「南部美人」。全国新酒鑑評会では金賞常連、世界最高級のワインコンテストIWCで〈チャンピオンサケ〉に輝くなど、海外の愛好家も唸らせる。そんな銘酒を手に、日本酒業界のため奔走する五代目蔵元・久慈浩介氏の、止まるところを知らぬ情熱の源泉とは。

先代たちが積み重ねてきた信頼の上にたまたま自分がいるだけで、僕一人は大したことない人間です。
僕の評価は、次の世代がどれだけいい仕事ができるかで決まる

久慈浩介
南部美人五代目蔵元

――いま、日本国内のみならず、世界各国でファンを獲得している日本酒のメーカーが岩手にあると知って、やってまいりました。何でも2023年までで60か国への輸出を達成されたそうですね。

〈久慈〉
僕はこの蔵に戻ってきた1995年、23歳の頃から、約30年ずっと「世界中で『南部美人』を飲んでもらう時代をつくる」と言い続けてきました。

1998年、初めてニューヨーク(NY)へ輸出したのをきっかけに、昨年はワインの産地として有名な南米チリにも輸出網が広がりました。南部美人はいま、世界五大陸にお届けしているんですよ。

――地球の真裏にまで。貴社のお酒は宗教や思想の違いにも配慮をしておられると伺っています。

世界の酒の市場を見たら、日本酒を飲む人の割合はまだ僅かです。2013年、ユダヤ教徒の食の戒律である「コーシャ」を取得し、以降も動物性の原料を使っていないことを示す「ヴィーガン国際認証」、遺伝子組み換えでないことを証明する「Non‐GMO」認証も日本酒として初めて取得してきました。

実はどれも、米と水を原料に造る日本酒なら取得はさほど難しくありません。世界には国の法律よりも宗教の戒律が重視される国がごまんとあります。このような壁を越えていかないと、世界で日本酒を飲んでもらう夢はいつまでも実現できないですから。
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なぜ、岩手の地酒が日本国内のみならず、世界で飲まれる酒となったのか? その立役者であり、東奔西走を続ける五代目の仕事観・人生観に興味は尽きません。

■国や宗教の壁を越え 愛される日本酒
■時代に抗い「品質一筋」を貫く
■蔵元の覚悟が酒の味を押し上げる
■手探りの海外進出で見えたもの
■〝物差し〟の異なる外国人に日本酒を売る
■なぜ、革新を続けるのか
■自分を生きることにオンもオフもない

プロフィール

久慈浩介

くじ・こうすけ――昭和47年岩手県生まれ。東京農業大学を卒業後、平成7年久慈酒造(現・南部美人)入社、製造部長として酒造り全般を指揮する。全国新酒鑑評会をはじめ様々なコンテストで金賞受賞。25年より同社代表取締役社長。著書に『日本酒で“KANPAI”』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。


編集後記

長い伝統ある酒造りの技と心の伝承。あくなき味の探究。常識を破る世界への輸出……経営者であり職人であり営業マンでもある久慈社長の口から出る言葉にはすべて、「南部美人」のため、日本酒を一人でも多くの人に知って飲んでほしいという切なる願いが滲み出ていました。常に挑戦を続けておられるからこそ、考え方にハッとさせられることがしばしばありました。その情熱が文字を通して伝われば幸いです。

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