5 月号ピックアップ記事 /エッセイ
浪曲に投じたこの命 未だ尽きることなし ~100歳現役・浪曲曲師に聞く~ 玉川祐子(曲師)

[©️Atiqa Kawakami]
玉川祐子氏、100歳(写真右)。いまなお舞台を務める現役の浪曲曲師である。明治初期より広く大衆に親しまれてきた浪曲は、語りを務める浪曲師と、三味線で伴奏をつける曲師が一体となってつくり上げる語り芸。17歳で入門したこの希有なる曲師を、今日まで突き動かしてきたものは何か。三味線携え歩みきた不惜身命、但惜身命の道のりを振り返っていただいた。

生まれ変わったら、やっぱり浪曲の道を歩きたいな。灰になるまで頑張りたい
玉川祐子
曲師
~寒空に瑞雲たなびく如月の2日、玉川さんが住む東京都内の公営アパートで取材は行われた。いまも1人暮らしを続ける百歳曲師は、とびきりの笑顔で取材陣を迎えてくださった。~
〈玉川〉
ようこそいらっしゃいました。狭い所ですが、どうぞお上がりください。
ここには娘や預かり弟子の港家小そめ(本ページトップ写真左)がしょっちゅう来てくれるから、いまも1人暮らしを続けているんです。だけど耳は遠いし、右目は見えないし、やだねぇ。もう100歳だからしょうがないんですけどね(笑)。
でも脚は元気でタッタ、タッタ歩けるから、いまでも舞台がある度に1人で浅草の定席・木馬亭までバスを乗り継いで行くんですよ。
木馬亭じゃ三味線だけでなく、浪曲もやるんです。他のことはパーだけど(笑)、浪曲だけは3席くらい平気で務めるんです。時々アンコールをいただいて、民謡や演歌を弾き語りすることもありますよ。
去年9月の敬老の日に開いていただいた百寿記念の独演会には、本当にたくさんのお客さんがいらしてくださいました。お客さんを泣かせて、笑わせて、感動させる。やっぱり浪曲っていいですね。
プロフィール
玉川祐子
たまがわ・ゆうこ――本名・中村りよ。大正11年茨城県生まれ。小学校を卒業後、奉公先で聴いた浪曲に魅了され、昭和15年浪曲師の鈴木照子に入門。17年曲師に転向し「高野りよ」として活動。玉川桃太郎と結婚後、「玉川祐子」に改名。100歳となったいまも現役を貫く。
編集後記
100歳現役曲師の玉川祐子さん。波瀾万丈の100年の道のりを振り返っていただいた後は、預かり弟子の浪曲師・港家小さんの名調子に合わせて、見事な三味線演奏を披露してくださいました。人生の哀歓を味わい尽くした名人の奏でる音色は、心に深く沁み渡りました。

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