3 月号ピックアップ記事 /鼎談
心の力をいかに高めるか 鈴木秀子(文学博士) 數土文夫(JFEホールディングス名誉顧問) 横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)
癸卯(みずのと・う)の年を迎えて1か月。あらゆる面で私たちを取り巻く環境は厳しさを増すばかりである。こういう時代に求められるのが、様々な変化苦難に処していけるだけの心の持ち方である。『致知』連載でお馴染みの鈴木秀子氏、數土文夫氏、横田南嶺氏は長年、それぞれの立場で人間の心と向き合ってこられた。変化の激しいいまのこの時代、どのような心構えで臨んでいったらよいのか。その人間学に根ざした人生や仕事の叡智に学びたい。
ささやかなことでも誰かが喜ぶことを自分から積極的に始めていくと、その喜びは大きく広がっていきます
鈴木秀子
文学博士
大宇宙はすべて陰陽のバランスでできています。その宇宙の摂理を人間の頭の中で考え出すと、明るい陽はいいけれども、暗い陰は悪いといったように勝手に分けてしまいます。
しかし、一見、陰に思えるもの、マイナスと感じるものの中に自分をサポートしてくれたり、力を与えてくれたりするものがたくさんあります。
私がずっと気になっているのは、日本人から覇気が感じられなくなったことです。もう歯止めが利かないくらい覇気がない。これは非常に由々しきことだと感じています
數土文夫
JFEホールディングス名誉顧問
この変化の激しい時代に休んではいけないんです。大切なのはスピードは遅くても継続し、途中で中断しないこと。特にこれからの人生百年時代、いままでのように年金も期待できないわけですから、自分の健康、職業能力、資産、この3つは年を取っても意識して保つ努力をしなくてはいけません。
現代の環境の変化に応じるにはこちらに主体性がないと振り回され、受け身になってしまいます。同じ環境に身を置いていても主体性を持って生きるのと、受け身で生きるのとではまるで異なります
横田南嶺
臨済宗円覚寺派管長
仏教では、生きる上で慈悲や優しさが大事だと説きます。しかし、それと相反する人を寄せ付けないほどの厳しさ。この2つを備えていなければ本当の慈しみにはならないのではないか、前進していけないのではないかと思います。
プロフィール
鈴木秀子
すずき・ひでこ――東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。聖心女子大学教授を経て、現在国際文学療法学会会長、聖心会会員。日本にエニアグラムを紹介。著書に『自分の花を精いっぱい咲かせる生き方』『幸せになるキーワード』(共に致知出版社)『死にゆく人にあなたができること』(あさ出版)『機嫌よくいれば、だいたいのことはうまくいく。』(かんき出版)など多数。
數土文夫
すど・ふみお――昭和16年富山県生まれ。39年北海道大学工学部冶金工学科を卒業後、川崎製鉄に入社。常務、副社長などを経て、平成13年社長に就任。15年経営統合後の鉄鋼事業会社JFEスチールの初代社長となる。17年JFEホールディングス社長に就任。22年相談役。経済同友会副代表幹事や日本放送協会経営委員会委員長、東京電力会長などを歴任し、令和元年よりJFEホールディングス名誉顧問。
横田南嶺
よこた・なんれい――昭和39年和歌山県新宮市生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。29年12月花園大学総長に就任。著書に『人生を照らす禅の言葉』『禅が教える人生の大道』『命ある限り歩き続ける』(五木寛之氏との共著)『十牛図に学ぶ』(いずれも致知出版社)など。最新刊に『臨済録に学ぶ』。
編集後記
令和5年が幕を開けて早1か月が経過しましたが、世の中は依然混沌とし、先が見えない状況です。こういう時、私たちはどのような心懸けで日々を生きていけばよいのでしょうか。『致知』の連載でお馴染みの鈴木秀子さん、數土文夫さん、横田南嶺さんによる鼎談は人間学的視点で貫かれており、人生や仕事の示唆に富んでいます。
特集
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鼎談
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