【第1回】自らは報われずとも 北 康利(作家)

〝二宮尊徳はどんな人か。かう聞かれて、尊徳のことをまるで知らない人が日本人にあったら、日本人の恥だと思ふ。それ以上、世界の人が二宮尊徳の名をまだ十分に知らないのは、我らの恥だと思ふ。〟
――作家・武者小路実篤の言葉です。

白洲次郎、松下幸之助、吉田茂、小林一三、稲盛和夫……日本の歴史に名を刻む数多の偉人の評伝を上梓してきた作家・北康利さんが、いま、刮目する人物。それが二宮尊徳です。
尊徳に深い敬慕を抱く北さんが丹念に資料を紐解き、縁の地に足を運んで活写される尊徳の生涯は、読む人にこれまでにない感動を与え、大いに生き方の指針となる内容です。

〈写真=著者撮影〉

彼の人生は悲劇的なものであった。
権力を握ろうとしたわけでも富貴を願ったわけでもない、ひたすらに世の安寧を願う無私の人生であったにもかかわらず、生前には報われることがなかった。
徳をもって徳に報いようとした(以徳報徳)彼に対し、周囲はあまりにも忘恩であったのだ

北 康利
作家

二宮尊徳の墓所は、彼の終焉の地である日光の報徳二宮神社社殿の裏にある。鬱蒼とした木々に囲まれ、昼なお暗い。まるで隠されているようなひっそりとした佇(たたず)まいだ。

遺体が土葬されているため、いわゆる土饅頭になっており、今ではその上に草が生い茂っているが、彼が間違いなくこの世に存在したことを生々しく実感させてくれる。

土饅頭の前に墓碑があるが、不思議なことに墓の傍らには、遺言に背いて墓碑を建てたことを詫びる門人たちの言い訳の碑が建っている。

これについては後に触れるが、込み入った事情の存在を感じさせる。

彼は明治に入ってから神になった。

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プロフィール

北 康利

きた・やすとし――昭和35年愛知県生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券業務企画部長等を歴任。平成20年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。『白洲次郎 占領を背負った男』(講談社)で第14回山本七平賞受賞。著書に『思い邪なし 京セラ創業者稲盛和夫』(毎日新聞出版)など多数。近著に『ブラジャーで天下をとった男 ワコール創業者 塚本幸一』(プレジデント社)がある。


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