困難は人生のハードル 乗り越えた喜びは私だけのもの 川嶋みどり(日本赤十字看護大学名誉教授)

日本看護界の草分けとして知られる日本赤十字看護大学名誉教授の川嶋みどりさんは、92歳のいまなお講演活動や雑誌の刊行などを通じて、よりよい看護のあり方とは何かを追求し続けている。戦時下に生まれ、様々な困難を乗り越えながら看護一筋に歩んできた川嶋さんに、何歳になっても溌剌と生きる秘訣、自らの運命を力強くひらいていく要諦を伺った。

齢を重ねてできなくなったことを数えるより、これならできるというものを見つける。

「ピンピンコロリ」と死ぬことではなく、心や魂を磨き、最期の瞬間まで「ピンピンキラリ」と輝いて生きることを目指す。

そんな心意気で過ごすことが大切ではないでしょうか

川嶋みどり
日本赤十字看護大学名誉教授

――川嶋さんは看護の道一筋に70年歩み、92歳のいまなお全国を飛び回る日々だそうですね。

〈川嶋〉 
現在は患者さんを直接ケアすることは叶いませんけれども、いろんな活動を通じて後進に発破を掛けることはできるんです。ですから自称「生涯現役」で、いまも講演や執筆を続けています。

昨年10月には講演で熊本、11月には奈良と彦根、松本に行ってきましたし、つい先日も2泊3日で静岡に赴き、学会の市民公開講座で講師を務めてきたところです。その傍ら雑誌の連載を2本書き、取材を受け……もう毎日が仕事。でも、皆さん喜んでくださるから休んでいる暇はありません。

――2022年には看護の総合月刊誌を創刊されたとお聞きしました。

〈川嶋〉 
雑誌の創刊は、看護の現状に対する危機感からでした。看護業務は医師の指示により行う「診療の補助」と、患者さんの心と体に寄り添って直接ケアする「療養上の世話」があります。私は自分の実体験からも常々、後者の役割の重要性を説いてきたんですね。

ところが、近年は医療行為の一部を看護師に移譲する制度が始まり、患者さんへのケアが蔑ろになっています。そうした中、出版不況の煽りで46年続いた『看護実践の科学』が廃刊に追い込まれました。看護は現場で起こる人間的なもの。創刊から携わったよしみもあり、現場の声に耳を傾ける雑誌が途絶えてしまうのはもったいないとの思いが募ったんですよ。

そこで編集委員有志らでクラウドファンディングを立ち上げたところ、予想を上回る1,000万円近くの資金が集まり、2022年の夏、91歳の時に『オン・ナーシング』を創刊しました。

――看護現場への並々ならぬ危機感が川嶋さんを突き動かしたと。

〈川嶋〉 
ええ。看護の未来をひらくためには……(続きは本誌にて)

 ▼ピンピンコロリではなくピンピンキラリを目指す
 ▼原点となった9歳の少女との出逢い
 ▼看護師であり続けた日々は闘い
 ▼困難には必ず意味がある
 
本記事では全4ページにわたって、92歳となったいまなお現役看護師として活動を続ける川嶋さんの体験談をお話しいただきました。
看護の現場で70余年以上生と死を見つめてきた氏が説き明かす、運命をひらいていくヒントとは――。

病児に誠心誠意向き合った新人時代

プロフィール

川嶋みどり

かわしま・みどり――昭和6年韓国・京城(現・ソウル)生まれ。26年日本赤十字女子専門学校卒業後、日本赤十字社中央病院(現・日本赤十字社医療センター)勤務。平成15年日本赤十字看護大学教授就任。看護学部長、客員教授を経て、23年より現職。現在は健和会臨床看護学研究所所長、一般社団法人日本て・あーて(TE・ARTE)推進協会代表理事を兼任。19年フローレンス・ナイチンゲール記章、27年山上の光賞受賞。講演・執筆活動で看護のあり方を提言し続け、日本のナイチンゲールと呼ばれている。著書に『長生きは小さな習慣のつみ重ね』(幻冬舎)『看護の力』(岩波新書)など多数。


編集後記

とても92歳とは思えないバイタリティーに満ち溢れている。川嶋さんにお会いした印象は、まさにそのひと言に尽きます。1時間に及んだ取材中も常に背筋をピンと正され、淀みなく話される姿から、「生涯現役」とは何たるかを感じ入りました。川嶋さんの体験談から紡ぎ出された至言の数々には、最期まで命を輝かせて生きる秘訣が詰まっています。

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