10 月号ピックアップ連載/二十代をどう生きるか
基礎の徹底こそが何にも勝る成長の要諦 吉田 都(新国立劇場舞踊芸術監督)

世界三大バレエ団の一つ、英国ロイヤル・バレエ団にて、アジア人女性初のプリンシパルに選ばれ、「ロイヤルの至宝」と称された吉田都さん。22歳から引退までの約30年、常にトップを走り続けてきた。吉田さんといえば徹底的に練習に打ち込むストイックさが有名だが、その根底にある情熱、20代の頃から積み重ねてきた努力の日々に迫る。

「好き」に極まりはありません。それぞれの場でそれぞれの理想を追い求めて、輝いて生きる人が一人でも増えることを願っています
吉田 都
新国立劇場舞踊芸術監督
バレエが好き─。
その情熱が、2019年に現役を引退したいまなお私の心を揺さぶり続けています。その気持ちは、バレエに初めて出逢った時のワクワク感にいささかも劣りません。
バレエは舞台上の華やかさとは裏腹に、非常に体を酷使する芸術です。そのため大抵の人が30代半ばで引退する中、44年という長きにわたって私が舞台に立ち続けることができたのも、このバレエへの情熱ゆえでしょう。
バレエに出逢ったのは、幼稚園でバレエを習っていたお友達の発表会を見たことがきっかけでした。綺麗な衣装にお化粧をして、照明を浴びて華麗に踊る姿に、あっという間に惹き込まれたのです。9歳で念願叶ってバレエスクールに通い始めてからは、バレエができる喜びを噛み締めながら夢中で練習を重ねていきました。3歳からバレエを習い始める人がいる中で、9歳と割合遅くに始めたこともあり、「もっとうまくなりたい」と無我夢中だったのです。
初めこそ週一回、一時間の練習でしたが、小学校高学年になる頃にはどんどんハードになり、放課後はほぼ毎日お稽古に通い、日曜日は七時間ほど踊り続けていました。いまだったらとても真似できないほど厳しいレッスンでしたが、とにかく踊ることが好きだった私はその厳しさがとても嬉しかったことを覚えています。
ここでバレエに必要な基礎を叩き込んでいただけたことは、私のバレエ人生にとって、かけがえのない財産となりました。辛いお稽古に耐えられたという自信がのちに留学した際に大きな心の支えとなりましたし、自分を追い込んで鍛える習慣も自然と身につきました。中にはこの厳しさに耐えられず辞めていく人もいましたが、私は困難になればなるほど燃えてくる性分で、痣だらけになりながらも踊り続けていました。
プロフィール
吉田 都
よしだ・みやこ――東京都生まれ。1983年ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞を受賞し、英国ロイヤル・バレエスクールに留学。84年サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ団に入団。88年22歳の時にプリンシパルに昇格。95年英国ロイヤル・バレエ団に移籍。2010年からはフリーランスのバレリーナとして舞台に立ち続ける。19年に現役を引退し、20年より新国立劇場舞踊芸術監督を務める。著書に『バレリーナ 踊り続ける理由』(河出書房新社)。
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