10 月号ピックアップ記事 /対談
釈迦とキリスト——人類を照らし続ける 二大聖人が唱えた人間学 鈴木秀子(文学博士) 横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)

私たち人類の発展や心の救済に大きな影響を与えた人物として釈迦とイエス・キリストの二大聖人を挙げることは異論のないところだろう。若くして天の願いや宇宙の法則を悟り、生涯それを人々に伝えて今日まで人類を幸せに導いてきた二大聖人から私たちはいま何を学べばよいのだろうか。混迷の時代を照らすその教えを、シスターである鈴木秀子氏、禅の師家である横田南嶺氏に語り合っていただいた。

人間にとっての苦しみとは決して無駄なものではなく、苦しみのあるところには必ずそれを乗り越える神様の愛と恵みが与えられています
鈴木秀子
文学博士
イエス様は十字架につけられる前に「天の父よ、この試練をどうか取り除いてください。しかし、これが自分が通るべき道であるとすれば引き受けます」と祈ります。
私たちの人生においても「何でこういう苦しいことが起きるのか」と嘆きたくなることが起きますけれども、それぞれに通らなくてはいけない試練があることを、イエス様は自ら磔になることによって示しているんですね。イエス様は死後、3日目に復活しますが、そのことも苦しみを乗り越えたところに本当の復活があることを私たちに教えてくれているように思うんです。

あらゆる面において怨みを残すような勝ち方は、禍根を生むことしかないと思いますね。怨みの連鎖を止めるのは慈しみしかありません
横田南嶺
臨済宗円覚寺派管長
いま会社でもいろいろな人間関係でも、嫌いな相手に直接的に暴力を振るうことは少なくなったように見えます。しかし、半面、SNSなどの世界では、自分の顔が見えないのをいいことに徹底して罵詈雑言を浴びせかけ、言葉で傷つけたり、時として死に追い込んでしまうケースもあります。せめて、誰もが自分の中に恐ろしい斧や刃物を持っていると自覚してさえいれば、発する言葉には慎重にならなくてはいけないと思うはずです。
プロフィール
鈴木秀子
すずき・ひでこ――東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。聖心女子大学教授を経て、現在国際文学療法学会会長、聖心会会員。日本にエニアグラムを紹介。著書に『自分の花を精いっぱい咲かせる生き方』『幸せになるキーワード』(共に致知出版社)『死にゆく人にあなたができること』(あさ出版)など。近刊に『機嫌よくいれば、だいたいのことはうまくいく。』(かんき出版)。
横田南嶺
よこた・なんれい――昭和39年和歌山県新宮市生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。29年12月花園大学総長に就任。著書に『人生を照らす禅の言葉』『禅が教える人生の大道』『命ある限り歩き続ける』(五木寛之氏との共著)など多数。近刊に『十牛図に学ぶ』(いずれも致知出版社)。
編集後記
トップ対談は、本誌でお馴染みのシスターで文学博士の鈴木秀子さんと、臨済宗円覚寺派管長・横田南嶺さんにご登場いただきました。人間学という視点で、釈迦とイエス・キリストの教えを分かりやすく解説いただいています。人間はなかなか理想通りには生きられない存在です。聖人と呼ばれる人ですら、心の中の闇、煩悩と日々格闘しながら生きています。お2人の対談は人間のそのような弱さを認めた上で、いかに光を求めて歩いていけばよいのか、その道標が示されています。

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