10 月号ピックアップ記事 /第一線で活躍する女性
努力<夢中 自分の花を咲かせて生きる 橋本美穂(通訳者)
通訳とは、日本語と英語を変換することではなく、相手の感情を代弁すること――そんな信念を胸に、ビジネスの現場で通訳に当たっているのが橋本美穂さんです。橋本さんが一躍メディアで取り上げられるようになったのは、千葉県船橋市のご当地キャラクター・ふなっしーや、ミュージシャンのピコ太郎さんの通訳を務め、その対応の素晴らしさが話題になったことでした。(写真左端が橋本さん)
ピコ太郎さんがギネス世界記録に認定された記者会見の時、通訳で苦心された際のエピソードを、記事から抜粋して紹介いたします。ぜひご覧ください。
その方が発する言葉と熱意を最大限に通訳することが私の役割だと思っています
橋本美穂
通訳者
――橋本さんはビジネス通訳を主としながらも、ミュージシャンのピコ太郎さんや千葉県船橋市のご当地キャラ・ふなっしーなどの通訳を務め、その対応の素晴らしさが大変注目を浴びましたね。
橋本
十五年間で五千件以上の案件を手掛けてきましたが、いま挙げていただいたような方々の通訳は実は数件なんです。九割以上は企業と機密保持契約を結んで公になっていないため、世間からはエンタメ界の通訳者かと思われているのかもしれません(笑)。
――それほど、僅か数回の通訳が印象的だった。
橋本
日本語のギャグも、その面白さが伝わるように果敢に英訳を試みたため、母親からは「あなたの心臓には毛が生えている。しかも金たわしのような剛毛が」と言われたことがあります(笑)。
例えば「PPAP」という曲がギネス世界記録に認定された際の記者会見で、ピコ太郎さんが「こんなことになって、驚き桃の木二十世紀」と面白おかしく発言しました。このような言葉遊びは直訳しても通じないため、普通は「I’m so surprised !」と訳して終わりです。しかし、少しでもピコ太郎さんの魅力を伝えたいと考え、本人さながらのテンションで訳そうとするも力及ばず、「I’m so surprised, like a peach tree」と半端な訳になってしまいました。案の定、皆さんキョトンとされていて、大変申し訳なく思いました。
――通訳はライブですので、臨機応変な対応が求められますね。
橋本
その方の熱意や心意気、人間性を伝えたい、これが私の通訳者としてのモットーです。通訳は言葉を扱う仕事ですが、ただ英語と日本語を置き換えるのであれば機械でいい。人間である自分がやるからには、その方の「心」までお伝えしようと、毎回徹底的に準備をした上で臨んでいます。
プロフィール
橋本美穂
はしもと・みほ――1975年アメリカ生まれ。幼少期をサンフランシスコで過ごす。
帰国し神戸市の高校を卒業。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、キヤノンに総合職として入社。同社在籍中に通訳者養成学校夜間コースを修了し、入社9年目に通訳者になることを決意。日本コカ・コーラの常駐社内通訳者
として1年間勤務後、独立。現在、フリーランスの通訳者、及び通訳者養成機関の講師として活躍中。
編集後記
非常に明るく、相手を一瞬で笑顔にしてしまう達人。それが橋本さんにお会いした第一印象でした。取材は1時間程度でしたが、部屋の外にまで笑い声が漏れていたのでは……と心配になるほど、終始笑いが絶えない中でご自身の歩みを振り返ってくださいました。
しかし、ただ明るいだけではなく、言葉一つひとつに真心を込め、できあがった文章にも最後まで丁寧に校正してくださいました。その真摯なお姿から、橋本さんの仕事に対する姿勢を垣間見る思いがしました。
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